| 【 映画雑感 】No.212 |
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ストーリー 禁酒法時代のシカゴを舞台に、実在したギャングのボス、アル・カポネに闘いを挑んだ男たちの姿を描いたアクション大作。 1930年、ギャングからの密酒購入を拒否した店に爆弾が仕掛けられ、巻き添えで少女が死ぬ事件が起きる。FBIの財務省特別 捜査官としてエリオット・ネス(ケヴィン・コスナー)が派遣されてくるが、警察署内にはアル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)の 内通の網が張り巡らされており、捜査は難航を極める。 ネスは町で知り合った老巡査マローン(ショーン・コネリー)の忠告でクリーンなメンバーを集めることにする。集まったのは ネス、マローン、警察学校の新人ストーン(アンディ・ガルシア)、FBIから派遣されてきた財務官のウォレス(チャールズ・ マーティン・スミス)の4人。ネスたちは賄賂に汚染されない “アンタッチャブル”(だれも手を出せない者たち) として固い結束を結ぶ。 “アンタッチャブル” 4人のアンサンブルが抜群だ。筆頭はもちろんエリオット・ネス。テレビシリーズ世代の私には、ケヴィン・コスナーは口元にややしまりがなくてシャープさに欠けるのが物足
りないが、清潔感があるし、ちょっと頼りない感じも見ようによっては悪くない。実在のネスは結婚していなかったらしいが、妻子がいるという設定にしたことで、ネスの市民の安全を守るという遵法者の側面が説得力 を持った気がする。それに妻キャサリンを演じたパトリシア・クラークソンがいい。母性と女性性がしっとり交じり合って、ネスが命を懸け て妻子を守ろうとするのが自然に納得がいく。 ついで老警官マローン。カナダ国境での酒の密売買摘発の際に、死者を生きていると見せかけて口に拳銃をぶち込むド迫力には肝を 潰した。彼がカポネ配下の殺し屋に襲われ、絶命する場面は涙。賄賂に汚れなかった代償として出世の道を閉ざされた老パトロール警官の 正義への執念が、映画に厚みを与えていた。 ショーン・コネリーの滲み出る滋味がたまらない。経験の浅いネスを支え、いぶし銀の存在感を見せて、本作のコネリーはアカデミー助演男優賞を獲得している。
財務官ウォレスが一見臆病そうでいて、意外に剛胆なのが面白い。帳簿の虫の彼が “脱税” でカポネを逮捕できるのではないかと 気づいたのは慧眼(けいがん)だった。たしかに密造酒売買にしろ殺人にしろ、直接の犯罪行為でカポネを上げる のは不可能だったろう。上げられるのは組織の末端の者ばかり、カポネは安全な場所に身を置いていたはずだから。 本作の白眉は何といってもあのシカゴ中央駅の階段のシーンだろう。元になった『戦艦ポチョムキン』(25)のオデッサの階段に比べたら チャチという人もいるが、私自身は『戦艦ポチョムキン』は群集の凄さには圧倒されたが、階段を乳母車が転がり落ちる肝腎のシーンは タラタラ長くてちょっと退屈した。 本作ではストーンが窮地に陥ったネスに銃を放り投げ、すかさず転がり落ちる乳母車を足で押さえ、同時に銃の狙いをぴたりと敵に 当てる。この一連の動作をスローモーションを使って表現し、さらに赤ん坊の泣き声だけを静寂の中に響かせて緊張を高める。痺れるほど かっこいい。このシーンを見たいばかりにこの映画を見るといってもいい位だ。 新人警官ストーンの若さの中の鋭さと落ち着き。アンディ・ガルシアはこのシーン1つで、映画全体をおおう強烈な印象を残したと 思う。
この4人が束になっても、一歩も引けを取らぬ迫力を見せるのがデ・ニーロ扮するアル・カポネだ。独特の丸顔(デ・ニーロは額の
上まで毛を抜いて、演技への凄いこだわりを見せている)や指を突き出して雄弁を振るう姿は、憎々しく、威圧的で、怖い。あの宴会
シーンなんて、バットを手にした瞬間からもう恐怖で背中がゾワゾワしてくる。警察機構の隅々から市政の上層部まで、賄賂と報復される恐怖の2本立てで彼の言いなりになっていたのだ。そのカポネが殺人や麻薬 ではなく、脱税で墓穴を掘るとは、自分でも夢にも思っていなかったことだろう。彼は11年の刑で服役、出所後はシカゴに戻ることは なかったそうだ。 特筆ものは殺し屋ニッティに扮したビリー・ドラゴ。動かぬ目、濡れ濡れとした唇など、異常者っぽさが無性に怖い。 豪華なキャスティング、禁酒法時代のシカゴを再現した重厚な美術、派手な銃撃戦、スリル、アクション、友情、とどれ1つ取っても 申し分がない。法廷場面のどんでん返しでは胸のすく思いがする。ラストの、さり気なく別れていく男たちの余韻もこたえられない。何度 見ても満足の溜め息が出てしまう。 【◎○△×】8 |