| 【 映画雑感 】No.201 |
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ストーリー ダニエル・クレイグ扮する6代目ジェームズ・ボンドが活躍する「007」シリーズの第21作。イアン・フレミングが書いた007 シリーズの第1作の映画化である。 殺しの許可証の “00(ダブルオー)” ナンバーを取得したジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、世界中のテロリストの 行動資金を影で支える男、ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)の資金を断つためにモンテネグロへ向かう。彼がカジノで大掛かりな 勝負を計画しているのを知ったためだ。 ボンドに任されたのは、国家予算にも等しい1500万ドルもの掛け金。そんな彼の前に美貌の女性、ヴェスパー・リンド(エヴァ・ グリーン)が現われる。ボンドのお目付け役として、財務省から送り込まれたのだ。旧友マティス(ジャンカルロ・ジャンニーニ)らが 見守る中でカジノの大勝負が始まる・・・。 『カジノ・ロワイヤル』は67年に一度映画化されているが、これはピーター・セラーズ主演のパロディもので、正統派007シリーズ としては本作が最初になる。ピアース・ブロスナンの次の6代目ボンド候補として、ブラッド・ピットやディカプリオの名が取りざた され時はちょっと違う気がしたが、ダニエル・クレイグに決まったと知ってハタと膝を打った。
『ミュンヘン』(05)以来気になる俳優だったのだ。シャープでセクシー、正装のスーツも似合いそう。期待はたいてい裏切られる
ものだが、今回ばかりはそれも外れて、頭から尻尾まであんこ一杯の面白さだった。まずは冒頭の長い長い追っかけシーン。007のオープニングはド派手な仕掛けのアクションと相場が決まっている。それはそれで 毎回お楽しみなのだが、本作はガラリと趣向を変えて、高いビル、動くクレーン車などを次々に乗り越え、飛び降り、飛び上がり、自分 の脚と腕でひたすら逃げる、ひたすら追っかける。 逃げる爆弾男は本来はスタントマンだそうだ。目を奪われるほど敏捷・強靭、追いかけるボンドも呆れるほどにタフ。肉体の限界を 試すようなアクションに久々に感動した。 ボンドが完全無欠のスーパーマンでないところが新鮮だ。冒頭マダガスカルでの追っかけで、窮地に陥ったボンドは大使館を 爆破し、それがニュースとして世界配信されたことでM(ジュディ・デンチ)に怒られたり(この時はなんと、Mに「00(ダブルオー) を与えるのは早すぎた」とさえ言われて、問題児扱いされている!)、世界中のテロリストに資金を供給している “死の商人” ル・シ ッフルとのカジノ対決では、一度は大敗を喫したりする。 酒に毒が仕込まれているのに、気づかずに飲んで死にかけたり、ル・シッフルに捕まって拷問されたり、もう散々。悪役ル・シッフル も ‘世界を動かす影の権力者’ というような存在ではなくて、自分も巨大な借金を背負い、そのカタに影の組織に命を狙われている、 という切羽つまった状況だ。変に人間臭い分、自分が生き延びるためにはどんなことでもしそうな恐さがある。 従来のボンドものと違っているもう1つの点は、ボンド・ガールがたんなる彩りだったり、派手なアクションを披露したりしないとこ ろ。エヴァ・グリーンが扮するヴェスパーは、ボンドの金の使いっぷりのお目付け役として、財務省から派遣されたいわば経理係だ。 ボンドがカジノで大負けした時、
「もうこれ以上は金は出せない」と突っぱねるのも彼女だ。理知的で気が強く、容易にボンドの魅力に屈しない。それでいて、血を見るとショックから震えが止まらないいじらしさを見せる。 バスルームでシャワーを浴びながらうずくまる彼女をボンドが黙って抱きしめるシーンは、2人の間では最初のラブシーンといえる場面 だが、それだけにとても印象に残る。 ボンドはシリーズ第6作『女王陛下の007』(69)で一度結婚している。ボンドが女性を本当に愛したのは、本作のヴェスパーと 第6作のトレーシーの2人だけなんじゃないかと思う。ヴェスパーとの恋は彼女の裏切りもあって、トレーシーの死とは別の苦味がある。 こうした体験がボンドを非情なプロの諜報員に成長させていったのだ。フレミングの原作第1作だけあって、後のボンドを見る上でも とても興味深い作りになっていると思った。 ヘンテコリンな新兵器が登場しないのも本作の特徴。これはけっこう本シリーズの楽しみなのだが、本作に限っていえばなくてよかった と思う。したがってQも登場しない。 諜報員としてはまだ未熟だが、1人の男としての魅力を十分に発揮した新生ボンドの誕生に、映画を見る楽しみがまた1つ増えた。 早くも次回作が待ち遠しい。 【◎○△×】8 |