| 【 映画雑感 】No.191 |
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ストーリー 21世紀ヨーロッパのもっとも大きな問題の1つ、不法移民を、『輝ける青春』のマルコ・トゥリオ・
ジョルダーナ監督が、13歳の少年の目を通して描いている。サンドロ(マッテオ・ガドラ)は、北イタリアの小都市ブレシャで何不自由ない家庭に暮らす13歳の少年だ。夏休みに父(アレッシオ ・ボーニ)とその友人と一緒に出かけた地中海クルージングで、夜、風に煽られて海中に転落してしまう。 溺れかかっていたサンドロを助けたのは、偶然通りかかった不法移民を乗せた密航船だった。 そこで彼は、ルーマニア人の17歳の少年ラドゥ(ヴラド・アレクサンドル・トーマ)とその妹アリーナ(エスター・ハザン)と 親しくなる。彼らの力を借りながら、なんとかイタリアに帰り着いたサンドロだが・・・。 邦題は原題とはずいぶん違うようだが、裕福な家庭に育った13歳の少年が、移民の厳しい現実を知ることで、社会に目を開かせ られる様子をよく表わしていると思う。 サンドロは北イタリアで工場を経営する父とその友人の3人で、ギリシャに夏休みのヨット旅行に出かけるが、夜、過って海に転落 してしまう。危うく溺死しかけた時に助けてくれたのが、通りかか
った船から飛び込んだ若者だった。この船がじつにすさまじい。今にも沈みそうに老朽化し、そこに年齢も人種もさまざまな男女が溢れんばかりに乗っている。“鈴なり” というのはまさにこんな状態をいうのだろう。 腐った食べ物、わずかな飲み水、排泄はビニール袋をもって甲板の下で済ます。炎暑にさらされた地獄船。不法移民を運ぶ密航船 だったのだ。 それまで知っていた世界とのあまりの違いに呆然とするサンドロ。それはそのまま私の驚きに重なる。移民せざるを得ない人々が身を 置く現実が、この船に凝縮されているのが分るからだ。 映画は私にとって基本的に娯楽であり、勉強しようという殊勝な心がけで見るわけではないが、それでも知らなかったことを知って 驚くことも多い。本作が描く不法移民問題もその1つ。この点で私は13歳のサンドロとほとんど変わらないと痛感する。 船員はイタリアの港が近づくと、密航料をただ取りしてモーターボートで遁走してしまう。置き去りにされた船は巡視船に発見され、 移民たちは収容センターに移される。
サンドロを海から助けてくれたのはラドゥという名のルーマニア人の若者だった。彼は年齢詐称がばれて強制送還されそうになり、妹
アリーナとセンターを脱走してサンドロの家に来る。密航船の中で2人と親しくなったサンドロは、なんとかして2人を助けたいと思い、彼の両親も息子の命の恩人に出来るだけのことを しようとする。ここには恵まれた階層の人たちの善良さと、人間に対する信頼感が表われている。 しかし、過酷な環境を生き抜いてきたラドゥとアリーナはずっとずっとしたたかだった。2人はサンドロの家から金品を盗んで逃走 してしまうのだ。裏切られた友情に落胆するサンドロ。こうして彼は善意だけでは解決しない問題があるという苦い現実を学ぶ。 しかし、13歳の少年の心は純粋で、それゆえに強いとも思う。兄妹から電話で連絡が来ると、彼は一人で列車に乗って会いにいく のだ。困っているなら力になりたいという思いを抱いて。
移民スラムで再会したアリーナの姿は、サンドロの予想を超えるものだった。そして、ラドゥとアリーナは本当に兄妹なのかという
疑問にも、彼は突き当たる。13歳という多感な年頃の感受性が、人間の暗い側面を察知するのだ。アリーナとともに、途方に暮れたように夜の道路端に座り込むサンドロの姿に、この問題の難しさが象徴されているような気がした。 ラドゥとアリーナに扮したヴラド・アレクサンドル・トーマとエスター・ハザンの2人が強烈な印象を残す。警戒心を解かない鋭い眼 の光り、本能を研ぎ澄ましたような野生の匂い、2人で1人、決して離れないという強い意志、全身から不思議な魅力を発散していた。 【◎○△×】7 |