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【 映画雑感 】No.183

ガープの世界


1982年  アメリカ  137分
監督 ジョージ・ロイ・ヒル
出演
ロビン・ウィリアムス、メアリー・べス・ハート、グレン・クローズ
ジョン・リスゴウ、ヒューム・クローニン、ジェシカ・タンディ

  ストーリー
 ベストセラーになったジョン・アーヴィングの自伝的小説の映画化。
 第2次世界大戦中、看護婦のジェニー(グレン・クローズ)は結婚はせずに子供だけが欲しいという思いから、傷病兵を一方的に 冒して子どもを宿す。生まれた息子はガープ(ロビン・ウィリアムス)と名付けられ、ジェニーは学内看護婦として住み込んでいる エリート校で教育を受けさせる。
 ガープの青春はレスリングと、本好きのヘレン(メアリー・べス・ハート)への恋で過ぎていくが、小説家となら結婚するという ヘレンの言葉で作家を志す。刺激を受けた母ジェニーも自らの半生記を発表し、ウーマンリブ運動の指導者に祭り上げられる。
 ロビン・ウィリアムスの出世作であり、これがデビュー作の母親役グレン・クローズ、性転換した元フットボール選手役のジョン・ リスゴウの女装ぶりがともに話題となった。

  一口感想
 不思議な人たちの不思議な物語を聞いたという感じだ。ガープの母ジェニーの、結婚はしたくないが子どもはほしい、という感覚は べつに珍しくないが、エレクトしっ放しの瀕死の兵士をレイプし て子どもを作るというのはそうとう変わっている。
 レイプというのは男女の別なく問題じゃないかと思うが、「彼はグッド(よかった)と言った」ということで、ここはサラッと通り 過ぎる。後に彼女がウーマンリブのリーダー的存在になることを思うと、いさかか複雑な気分。

 ガープが思春期にかかると、彼女はこうした出生の秘密をあっさりと息子に打ち明ける。息子が作家を目指してなにやら執筆を始める と、「私が先よ」とばかりにサラサラと半生を書き上げ、あっという間にベストセラーになる。内容からフェミニズムのリーダーに祭り 上げられると、すんなり適応して、女性のためのシェルターを作る。

 こうした生きかたを見ていると、彼女に何かはっきりした主義・主張があるわけではなく、心の赴くままに行動しているだけなのだ ろうという気がする。それでいて生きかたにブレがない。芯がかっちりしている。この辺が不思議な感じだ。
 自伝を書くために娼婦に「男にセックスを売るってどんな気持ち?」とインタビューする場面がある。世間を知らないというか大胆と いうか、びっくりさせられるが、こだわりも偏見もなく、透明で率直で、肩にヘンな力が入っていない。
 ジェニーは下手をすれば独善的な嫌な女になりかねないが、グレン・クローズにかかると、世俗の垢にまみれない永遠の聖処女のよう に見えてくる。海のように広やかで、すべてをこだわりなく包み込む女性なのだと自然に納得してしまうのだ。

 ジェニーの親友ロバータは性転換手術をした女性だ。元はフットボール選手だっただけに、男性としても図抜けて大きな体をしている。 顔も仕草もことさら女性的なわけではない。
 それなのに、かもし出す空気は温かくて母性的。いつの間にか柔らかくやさしい気持ちになる。男優が女装して演じていることをきれいに忘れてしまうのだから、ジョン・リスゴウも不思議な俳優だと思う。
 ロバータはガープの子どもたちを我が子のように愛し、世話をし、ジェニーが死ぬと心を撃ち抜かれたように悲しみに沈む。彼女を 見ていると、“女性同士の連帯” とか “信頼” という言葉が頭に浮かんでくる。フェミニズムという言葉は彼女にもっともふさわしい かもしれない。

 ガープはどうか。父親に憧れ続けていた少年が、ある日いきなり、仰天の出生の顛末を聞かされる。作家を目指せば先に母親が有名に なり、賞をとるほどの作品を発表しても「〇〇さんの息子ね」としか認識されない。到底やってられないところだが、グレも反抗もせず、まっすぐに育つ。
 妻に浮気されても、母親に「あなたが悪い」と諭されてよりを 戻す。考えたら彼もかなりヘンな人だが、それでも母親のジェニーよりは普通かもしれない。
 というのは、シェルターに集まるフェミニズム・グループが自らの主張のために舌を切断する行為を、どうしても受け入れられない からだ。ジェニーは「彼らがしたい行為を止めることはできない」と、気に留める様子がない。彼女の感覚はやはり常人の域を超えて いる。

 この映画は原作者ジョン・アーヴィングの半自伝的小説が基になっているというが、本当だろうか。あまりに不思議な話で、私には ファンタジー・フィクションとしか思えない。

 映画全体に流れているテーマは、女性の性的自立をフェミニズムの観点から描いているのかと思うが(ジェニーはフェミニズムを阻む 保守的力によって、ガープは誤ったフェミニズム信奉者によって、それぞれ凶弾に倒れる。2人の最期に、この運動の社会的困難さが 象徴的に表わされているような気がする)、しかしそれよりも、私には奇妙な母子の愛の物語という印象のほうが強い。
 宙を浮遊する赤ちゃんの愛らしさと、ビートルズの♪When I‘m sixty-four 〜♪ののどかなメロディが、映画の ハッピーな気分をとてもよく表わしていると思った。
  【◎△×】7

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