| 【 映画雑感 】No.161 |
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ストーリー 中年スチュワーデスが武器密売人と警察を向うに回して、見事に彼らを出し抜いて大金をせしめる痛快アクション。 三流航空会社の中年スチュワーデス、ジャッキー・ブラウン(パム・グリア)は、仕事のかたわら、銃の密売人オデール(サミュエル ・L・ジャクソン)に頼まれて現金の運び屋もしている。 ある日、それがバレて逮捕され、捜査官レイ(マイケル・キートン)にオデールの逮捕に協力するよう強要される。 オデールはジャッキーを始末しようとするが、メキシコにある50万ドルをジャッキーが運ぶと約束したことで、再び手を組むことに 決める。ジャッキーは保釈金融業者のマックス(ロバート・フォスター)が自分に惚れているのを知ると、ある計画を彼に持ちかける。 快適なテンポで展開されるストーリーが心地よい。三流航空会社のスチュワーデス、ジャッキーは、銃の密売人オデールの隠し金の 運び屋もやっている。警察はオデールを捕まえるために、ジャッキーのバッグから麻薬が出てきたように装って逮捕し、協力を強要する。 オデールを裏切れば殺されるし、捜査に協力しなければ、逮捕が会社にばれて首になる。ここで失業したらもう職はない。44歳の ジャッキーが、逮捕されるより将来の暮らしの不安のほうが怖い、と言うのがいやに現実的で面白い。 ジャッキーは、オデール逮捕に協力するフリをしつつ、メキシコから運ぶ50万ドルの大金をだまし取る策を練る。もちろん、そう いう中身は伏せたまま話が進むので、「警察に協力しろといわれた」とオデールに言う一方で、警察には「オデールの50万ドルを メキシコからもう1度運ぶことになった」とこれもそのまま打ち明けてしまうジャッキーに、「大丈夫かな」と心配になってくる。 オデールは抜け目がなくて冷酷で、「口が軽い」という理由だけで仲間を殺してしまうような男だ。どんな作戦も見抜かれるような 気がしてしまうのだ。
ところがジャッキーは、「あの女はあんたを怖がっている」という情報をちらほら洩らしてオデールの耳に入るようにする。オデール
は自分の賢さや相手に与える恐怖感に自信があるものだから、こういう話にはついだまされ油断する。こんなところがジャッキーの
したたかさだ。50万ドルをかすめ取る現金受け渡しのトリックは、「なるほど」と膝を叩きたくなる鮮やかさだ。 この場面は、ジャッキー、彼女の協力者・保釈金保証業のマックス、オデールに差し向けられた情婦のメラニーと仲間のルイス、それ ぞれの行動に合わせて何度かカットバックが行われ、それにつれてパズルのピースが少しずつ揃うように全体が見えてくる。こうして ジャッキーは、オデールと警察の両方を出し抜き、50万ドルという大金を見事手に入れるのだ。 もちろん話はこれで終らない。オデールが黙っているはずがないし、警察のオデール逮捕という命題も残っている。最後のもう一勝負がこれまた見事。ジャッキーは自宅で彼を待ち受ける間、笑顔のポーズを作ってはいきなり拳銃を向ける練習を何度もする。その前にちゃんと伏線が 張ってあるのだが、うっかりするとこれにまんまとだまされる。 ジャッキーに扮するパム・グリアが、男たちを手玉に取る中年女のしたたかさで、群を抜いた存在感を示す。ショッピング・モールの 婦人服売り場で、黒いスーツを着て試着室から出てきた時なんてもう、言葉がない。惚れ惚れみとれるしかないカッコよさだ。 オデールに扮するサミュエル・L・ジャクソン、情婦のヤンキー娘メラニーを演じたブリジット・フォンダ、と助演者たちも豪華だが、 なかでも出色なのは、オデールの刑務所仲間ルイスを演じたロバート・デ・ニーロ。 オデールの外出中にメラニーに誘われて関係したのはいいけれど、黙って胸のうちに収めておけない。おずおずと告白して、オデール に鼻先で笑われる場面は、彼ら3人の関係が如実に表れ
ていて印象的だ。オデールは初めからそのつもりで外出したというのだ。ルイスは小ばかにし続けるメラニーに腹を立て、いきなり拳銃で撃ち殺し、それを知ったオデールに罵倒され殺されてしまう。デ・ ニーロが情けない役を演じた挙句に途中退場なんて、監督がタランティーノでなければ考えられないことだ。いつものアクの強さを 消して、脇に徹しているのは大物の貫禄というところ。 もう1人、忘れてならないのが、ロバート・フォスター扮する保釈金保証業のマックスだ。彼はいい加減こんな仕事を辞めたいと 思っている。ジャッキーの片棒を担いで、試着室から50万ドルの入った紙袋を持ち出した時、そのまま遁走することも出来たはずだ。 けれども彼は律儀に契約の10%だけを差し引いて、そっくりジャッキーに渡す。もっと受け取ってくれという申し出も、一緒に なろうという誘いも断わる。己の生きる道を知っている中年男のダンディズム。ジャッキーが立ち去るのを見送るラストシーンで、 フォスターは映画のいいところを全部かっさらってしまった。 早朝訪れたマックスにジャッキーがコーヒーを振る舞い、2人でレコードを聞くシーンがある。寂しい中年男女が、朝のひと時、心を 寄り添い合わせる。ちょっと素敵な場面だった。 【◎○△×】8 |