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【 映画雑感 】No.158

ホテル・ルワンダ


2004年  イギリス/南アフリカ/イタリア  122分
監督 テリー・ジョージ
出演
ドン・チードル、ソフィー・オコネドー、ニック・ノルティ
ホアキン・フェニックス、デズモンド・デュベ、カーラ・セイモア
ジャン・レノ(ノークレジット)

  ストーリー
 アフリカのルワンダで長年くすぶっていた民族間の紛争が終息に向かおうとしていた1994年、フツ族によるツチ族の大量虐殺が 起こる。すさまじい混乱のさなか、1200人もの難民をホテルにかくまい、その命を救ったホテル支配人ポール・ルセサバギナの実話 の映画化。
 当初日本では公開予定がなかったが、20代の若者たちを中心とした熱心なファンのインターネットによる署名活動で、日の目を 見た。
 1994年、ルワンダの首都キガリ。ベルギー系高級ホテル “ミル・コリン” の支配人ポール(ドン・チードル)は、フツ族民兵に よるツチ族の虐殺が始まるという噂を耳にする。フツ族大統領はツチ族との和平協定に応じ、国連の平和維持軍も駐在している。初めは 信じなかったポールだが、大統領暗殺の報道がなされ、騒然とした空気のなかで帰宅途中、ツチ族の隣人がフツ族に襲撃されるのを 目撃する。
 ポールは、ツチ族の妻・タティアナ(ソフィー・オコネドー)と息子たち、そして怯えて彼の家に集まっていた隣人たちをホテルに かくまうことにするのだが……。

  一口感想
 ポールは有能なホテルマンだ。てきぱきとトラブルを処理し、客あしらいは如才なく、いざという時に備えて軍高官へのプレゼントも 怠りない。彼自身はフツ族だが、ツチ族を激しく攻撃するラジオのアジテーションには眉をひそめる。妻タチアナがツチ族だからという だけではなく、彼が穏や かな常識人であるからだ。

 たとえば、義姉夫婦が「フツ族民兵による虐殺が始まるという情報を手に入れた。亡命するつもりだからタチアナも一緒に連れていきたい」と 相談に来た時、ポールは「フツとツチの和平協定が結ばれようとして、世界中からジャーナリストが詰め掛けている。その 前でそんなことが起こるはずがない」と答える。
 なんという楽観。しかし私自身、こういう考え方をする傾向があるだけに、混乱の最中にいる人でも同じなんだ、という驚きとともに強い共感も覚える。

 フツ族による虐殺現場を隠し撮りした報道カメラマン(ホアキン・フェニックス)に、ポールは「あのフィルムがテレビで流されれば、 全世界が注目し国際救助があるだろう」と礼を言う。私もこの場面では同じように思った。ところがカメラマンは、「残念だが、だれも 助けには来ない。怖いね、と言ってディナーを続けるだけだ」と答える。
 ガンと頭を殴られたような衝撃。たしかにそうかもしれない。私だって当時しきりと伝えられるニ ュースをそれほど気に留めなかったのだ。
 ホテルが難民キャンプの様相を呈し始めた頃、国連の平和維持軍が到着する。ポールはこれで助けてもらえると喜ぶ。私も、これで 助かった、と思ったのだが、国連軍は白人だけを救出するとルワンダを去ってしまう。

 初めは自分の家族を守りたい一心だけで奔走していたポールだが、こうして何度も期待し、裏切られて、最後に自分の力で家族と1000人余の人々を救う決意をする。
 この頃からだ、彼が支配人の制服のスーツとネクタイを外し、ただの半袖シャツ姿になるのは。ヨーロッパ人のお仕着せを脱ぎ、一アフリカ人になったのだ。
 国連難民と認定された人たちが、トラックで国境に向かって出発する場面がある。ポール一家もその中に入っていたのだが、残された 人々がホテルの前で立ち尽くすのを見た時、彼は「あの人たちを置き去りには出来ない」と感じ、妻子を残して自分1人トラックを 降りる。愛する家族と永遠 の別れになるかも知れないのに。
 あとで妻は「私たちを見捨てた」と怒るけれど(それはそれでよく分かる)、この物語が胸を打つのは、本来普通の人であるポールの 中で、人間性が輝きを放つのを見るからだろう。
 ドン・チードルはこれまで主演作がないのが不思議なくらい演技力のある俳優だが、これが初の主役だそうだ。圧倒的な存在感で ポールの人間像を演じ切っている。

 長年続いていた民族紛争が、大虐殺に発展したのが1994年、4月。それからわずか3ヶ月のあいだにルワンダ全土で100万人 もの人々が殺害されたという。想像を絶することだ。にもかかわらず、国連平和維持軍は2500人から約10分の1の270人に減らされている。
 映画の終わり近くで、ツチ族の反乱軍が勢いを盛り返してくる様子が描かれる。今度はツチ族が、復讐の憎悪でフツ族を殺していく のか、と暗澹たる思いになる。

 平和維持軍の指揮官のカナダ人大佐(身体を張って難民救出に奮闘する大佐を、ニック・ノルティが好演)が、「西側大国にとって、 君らはゴミだ。なぜなら黒人だから。アフリカ人だから」とポールにいう場面がある。これが世界の現実だ。
 個人の英雄的美談で終わらせることなく、映画は悲劇の拡大を黙視した西側諸国のアフリカ観や、(私を含めて)世界の人々の無関心をも鋭く指摘しており、胸を衝かれた。
  【◎△×】7

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