| 【 映画雑感 】No.157 |
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ストーリー デビュー3作目のポール・ニューマンの出世作。実在のボクサー、ロッキー・グラジアーノの伝記をもとに、スラム街の不良から世界 チャンプへと上り詰めた男の半生を描いている。アカデミー撮影賞と美術監督賞を受賞。 ニューヨークのイースト・サイド。貧民街に生まれ育ったロッキー(ポール・ニューマン)は、靴磨きのロモロ(サル・ミネオ)らと チンピラ仲間と盗みと喧嘩に明け暮れていた。ある日、土地の不良グループとの喧嘩がもとで感化院に入れられたロッキーは、そのまま 陸軍に送り込まれるが、初日に上官を殴って脱走してしまう。 感化院仲間に教えられたボクシング・ジムを訪れたロッキーは、その後入れられた軍刑務所で本格的にボクシングを習い、自分の進む べき道を知る。 幼い頃から父親に殴られて育った “ロッキー” ことロッコは、力がすべてという価値観が骨の髄まで沁み込んでいる。トラブルは つねに腕力で解決する。それは刑務所に入っても変わらない。軍隊でさえそれを押し通す。 興味深いのは、彼がべつに「規律なんかクソくらえ」と思っているわけではなく、世の中にはルールや規律があることをもともと理解 していないから、というところ。
軍隊で上官を殴るのと町で喧嘩をするのは本質的に違うことが、彼はぜんぜん分かっていない。懲罰を受けてしゅんとなったロッキー
が、「軍隊は刑務所のようなものだと思っていた」というのには笑った。たしかに似たようなものだが、ロッキーは本気でそう思って
いたわけだ。彼が金に困って、ムショ仲間に教えられたボクシング・ジムを初めて訪れる場面もおかしさでは変わらない。ちょうどスパーリング・ パートナーがいなくて困っていたジムでは、ウロウロしているロッキーをリングに上げる。スパーリング・パートナーは殴られ役なのだが、そこが分かっていないロッキーは殴り返す。やられたらやり返す。街の喧嘩と同じ 理屈だ。ただ1つ違っていたのは、そのあと金をもらったことだ。 ジムでは彼の素質に気づいてトレーニングを勧めるが、ロッキーは全然興味がない。「金がなくなったらまた殴りに来てやるよ」と さっさと帰ってしまう。これは本当におかしかった。彼がどんな環境で育ち、どんな価値観を身につけたのかが、こんな言動に如実に 表われている。 ボクサーとして成功したロッキーが、イースト・サイドで昔なじみのロモロが警察に追われて逃げ回っているのにぶつかる場面がある。 200ドルで出来るうまい商売がある、と持ちかけるロモロに、ロッキーは黙って金を渡して立ち去る。 今の彼は世の中にルールや規律があることや、その枠を守ることの意味を知っている。しかしロモロは分からない。いまだに悪事から 抜け出せず、ドブネズミのように生きている。ロッキーに
は、ロモロに昔の自分がありありと見えたのだろう。溜まり場だったバーを訪れ、そこの親父に「コーラを飲むなら、金を払う覚悟で飲め。それが世の中というものだ」と諭される場面も 印象に残る。今の彼ならそれが分かる。 ロッキーがイースト・サイドにもどったのは、ミドルウェイト級の世界チャンピオン、トニー・ゼールとの対戦が怖かったからだ。 腕力だけで生きてきた男は、自分よりたしかに強い男を前にした時、怖気づく。ロッキーは自分の弱さを知り、初めて自分を殴り続けた 父親も、じつは現実に直面できない弱虫だったことに思い至る。 前半、クズのようなチンピラのロッキーが丁寧に描かれるだけに、苦悩し人間として成長していく彼の姿は説得力があり、心が揺す ぶられる。 シカゴに戻ったロッキーとトニーとの対戦は、ハリウッド映画お手のもののボクシング・シーンだけに迫力がある。実況放送の白熱 した声、聞き入る家族や友達、静まり返る街路、リングサイドの興奮が映画のクライマックスを盛り上げる。
長年の父(ハロルド・J・ストーン)との確執と和解、ロッキーをボクサーに育て上げるトレーナー(エヴェレット・スローン)の
人情、妻(ピア・アンジェリ)や母(アイリーン・ヘッカート)の支えなどが手際よく織り込まれ、ラストの町の凱旋シーンには上質の
感動が残る。私の中では端正なイメージの強いニューマンが、だらしなく肩をゆすり、落ち着かなく街を歩くチンピラがひどくサマになっている のに驚いた。不良ではあっても、真から悪に染まっていないナイーヴでピュアな輝きがある。デビュー間もないポール・ニューマンが、 早くもスターのオーラを放っている。 ピア・アンジェリが芯の強い妻ノーマを好演。これまで私にはジェームス・ディーンを振った女優という程度の認識しかなく、映画を 見るのは初めてだが、写真の印象とはずいぶんが違い、繊細な顔立ちの美人なのにも驚いた。これならジミーが恋したのも無理はない。 ロッキーと喧嘩をする町のチンピラ集団のなかに、ちらりとスティーヴ・マックイーンの顔が見えたり、シルヴェスター・スタローンの 出世作となった映画『ロッキー』(76)の原典でもあることなど、見どころは多い。 【◎○△×】8 |