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【 映画雑感 】No.145

グローリー


1989年  アメリカ  122分
監督 エドワード・ズウィック
出演
マシュー・ブロデリック、デンゼル・ワシントン、ケイリー・エルウェズ
モーガン・フリーマン、アンドレ・ブラウアー、ジミー・ケネディ

  ストーリー
 南北戦争で史上初めて組織された北軍の黒人部隊と、彼らを指揮する白人将校を描く戦争ドラマ。デンゼル・ワシントンがアカデミー 助演男優賞を受賞、その他撮影賞 録音賞の計3部門でオスカーを獲得した。
 1862年、ボストンの裕福な奴隷廃止論者の息子ロバート・グールド・ショウ(マシュー・ブロデリック)は黒人部隊、第54歩兵 連隊の大佐に任命される。多くの黒人たちが入隊を志願するが、その大半は南部から逃れてきた奴隷で、食事と軍服目当ての者だった。
 ショウは友人フォーブス少佐(ケイリー・エルウェズ)の助けを借りながら、一人前の軍隊にするために黒人兵たちに厳しい訓練を課す 一方で、老練な黒人曹長ローリンズ(モーガン・フリーマン)や反抗的な兵トリップ(デンゼル・ワシントン)との関わりを通して、彼 自身も軍人として成長していく。

  一口感想
 北軍に黒人だけの部隊があることを、私はこの映画を見るまで知らなかった。指揮を取ったロバート・ショウ大佐はボストンのリベラル な家庭に育ち、理想主義的な思想を親から受け継いだ人らしい。そうはいっても、理想と現実は大きくかけ離れる。彼が黒人兵を訓練し、 一人前の部隊にしていくプロセスは、彼がお坊ちゃん指揮官から一人前の将校に成長していくプロセスでもあり、それが映画の見どころの 1つになっている。

 鬼軍曹に「訓練が厳しすぎやしないか」と注意して、「大人になってください」と言われる場面がある。これで彼は悟るところがあった のだろう、懸命に、兵士だけでなく、自分自身に対しても厳しくなろうとする。
 それを示す印象的なシーンがある。脱走兵トリップに対し、ショウが鞭打ちを命ずる場面だ。私の中では、この映画の一番のハイライトはこの 場面だ。
 友人のフォーブス少佐は「まさか本当にやらないだろうね」と制止する。シャツを脱がされたトリップの背中は、苛酷な奴隷生活を 示すように、生々しい鞭の傷痕が残っている。目を背けずにはおれない。
 思わずたじろぐショウ。昂然と顔を上げてそんな彼を見つめるトリップ。ショウは制裁を中止するだろう、という私の予想に反して、彼は実行させる。

 鞭が振り下ろされるたびに、ショウは苦痛を顔に浮かべる、まるで自分が打たれているかのように。そんな彼をうめき声1つ立てず、強い視線で見つめ続けるトリップ。
 やがてトリップの目から一筋、涙が流れる。彼は分かったのだと思う。自分は奴隷として家畜のごとく打たれているのではなく、兵士として、軍規を破った罰を受けている のだということを。おなじ鞭打ちでもそこには天と地ほどの開きがある。苛酷な痛みをともに耐えることで、2人はこの時通じ合った、 と私は思う。
 デンゼル・ワシントンの存在感が圧倒的に光る場面だが、若くして指揮官になったがためのショウの苦悩を、マシュー・ブロデリックの 童顔がよく表現し得ていると思った。

 トリップは靴が補給されない不満から脱走したのだが、これは部隊全体の不満でもあった。物資の補給が黒人部隊であるという理由で いつも軽んじられたり、後回しにされる。また、彼らの役目はもっぱら肉体労働と占拠した町での略奪行為であり、戦闘には参加させら れない。一人前の人間として認められていなかったのである。
 朝鮮戦争やベトナム戦争では、黒人兵はもっぱら一番危険な地帯の戦線に赴かされた。形は変わっても、彼らに対する差別が続いて いることを思うと、複雑な気持ちになる。

 ショウは北軍内部のこうした差別に対しても戦う。そのクライマックスは、彼らの第54連隊が南軍の砦フォート・ワグナー攻撃の 先陣を志願し、認められたことだ。浜辺の狭い地帯を行軍する作戦で、全滅の覚悟がいる。しかし、部隊の士気は高まる。
 作戦の前夜、兵士たちがキャンプでゴスペルを歌い、次々にみなの前に立って誓いや祈りを語るシーンが印象的だ。人間として戦える ことの栄光・・・、それは死の恐怖より強いものなのか、と粛然とした気持ちになる。

 さらにもう1つ印象的なのは、ショウ大佐に旗手を命じられたトリップが断わる場面だ。ショウが怪訝そうに「軍旗を持つのは名誉な ことだ」というと、トリップは「それは白人の名誉だ。黒人は黒人、白人にはなれない」と答える。ここには黒人の強烈な自我意識が 感じられる。
 トリップが白人に示す敵意を、ローリンズが「いつまでも恨みを抱くな」「それは黒人のひがみだ」とたしなめるが、恐らくそうでは ないだろう。“栄光” は白人によって与えられるものではなく、自らが創り出すものだ。トリップの反抗や怒りは、そうした黒人として の誇りからから発していたのだと思う。
 これは後の “マルコムX” につながっていく黒人の人権意識だが、どちらも同じデンゼンル・ワシントンが演じているのが興味 深い。

 フォート・ワグナーの戦闘で第54連隊は半数以上の兵士を失い、トリップとともに、ショウ大佐も戦死する。彼の理想主義は本物 だったんだなぁ、とお坊ちゃん指揮官の成長ぶりにホロリとしてしまう私だ。彼らの壮絶な戦いは北軍に大きな影響を与え、南北戦争の動向を左右することになったという。
 マシュー・ブロデリック、デンゼル・ワシントン、モーガン・フリーマンら主要俳優だけでなく、友人フォーブスや幼なじみの黒人シールズ(アンドレ・ブラウアー)、射撃のうまいシャーツ(ジミー・ケネディ)、上官将校らを演じた脇役陣1人1人が印象に残り、見応えがあった。
  【◎△×】8

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