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【 映画雑感 】No.138

イン・ハー・シューズ


2005年  アメリカ  131分
監督 カーティス・ハンソン
出演
キャメロン・ディアス、トニ・コレット、シャーリー・マクレーン
マーク・フォイアスタイン、リチャード・バージ、ノーマン・ロイド

  ストーリー
 対照的な2人の姉妹が、一旦は壊れかけた絆を結び直して、理解し合うようになるまでを描いた ハートフルなドラマ。
 マギー(キャメロン・ディアス)はゴージャスな肢体にもかかわらず、難読症であることがコンプレックスとなり、定職に就かない 行き当たりばったりの日を過ごしている。姉のローズ(トニ・コレット)は有能な弁護士として成功しているが、容姿に自信が持てず、 高価な靴を買い漁るクセがある。
 家主に追い出されたマギーはローズのところに転がり込むが、彼女の恋人を横取りしたことで大喧嘩。居場所を失くし、会ったことも ない祖母エラ(シャーリー・マクレーン)を頼ってフロリダにいく。そこでも遊び暮らす日々。見かねたエラの命令で、老人のための 施設で介護士として働くことに・・・。一方、弁護士事務所を辞め、犬の散歩サービスを始めたローズには、新しい恋が待っていた。

  一口感想
 マギーは一見キュートでチャーミングだけど、ほんとうはとても困った人だ。嘘はつくわ、人の金はくすねるわ、自慢は見事なプロ ポーションの体とルックスだけ、仕事は長続きせず、やることなすこと目茶苦茶だ。でも、姉のローズに「若さはすぐに通り過ぎるのよ」 と言われると二言もない。30歳目前で、ほんとはマギーも焦っているのだ。
 弁護士のローズは頭脳明晰、仕事も優秀で順風満帆に見えるが、太り気味の身体にコンプレックスがあり、恋愛はいつもうまくいか ない。深夜まで事務所に残って仕事をするワーカホリックぶり も少々度を超している。

 じつはローズとマギーは相当にシビアな家庭環境に育っている。母親は精神を病んで、その子育てはかなりエキセントリックなもの だったらしい。自殺に近い交通事故で死んでいる。
 祖母のエラは娘を心配するあまりにその家庭に過干渉し、娘婿との折り合いも悪くかった。姉妹の父は妻が亡くなると、すぐに姑との縁を 切っている。父の再婚相手は姉妹に対して冷たい。

 加えて、マギーは難読症という障害を持っている。彼女の刹那的な生きかたは、劣等生という烙印を押されたコンプレックスが背景に ある。何をやってもうまくいかないのは、自分に自信がないからだ。
 マギーのたった1つの幸せな思い出は、母に子犬を買ってもらい、ハニー・バンという名前をつけたこと。でもその2日後に母は自殺 したのだ。マギーは幼くて、2つの出来事は結びついていないのだが、ローズはこれらのことをしっかり記憶している。彼女のワーカ ホリックぶりは、そうしな いではいられない不安が彼女を駆り立てるからだ。

 マギーが母の死の真相を知る場面はとても胸が痛い。幸せな思い出が、悲しみに直結していたのだから。しかし、彼女を見つめる ローズの表情はやさしい。さんざん困らされた妹だけど、胸には愛おしさがいっぱいなのを感じる。
 さらに2人を見つめる祖母エラの眼差し。彼女も、娘を死に追いやったのは自分ではないか、というかつての自分への悔いがある。
 3人がそれぞれの思いで心を寄せ合い、再生の道を歩み出す。施設の老人たちのユーモラスな姿なども交えて、語り口はあくまで 軽快で楽しい。『L.A.コンフィデンシャル』(97)や『ワンダー・ボーイズ』(00)のカーティス・ハンソン、女性を描くのも巧い人 なんだなぁ。

 盲目の大学教授(ノーマン・ロイド)に詩を読んでくれと頼まれたマギーが、彼の励ましで読み通し、詩の解釈を褒められて自信を得て いくプロセスが心に残る。
 ある朝、病室に行くとベッドは空だった。亡くなったのだ。病室にいた若い男性に名前を聞かれたマギーが「だれでもないの」と答える と、「あなたマギーでしょう」と言われる。教授は孫であるその男性に彼女のことを話していたのだ。

 自分を誰でもないというのはなんと悲しい答かと思う。でも、教授はちゃんと彼女を認めていたのだ。テラスで揺り椅子に座って遠くを 見つめるマギー。教授を失った悲しみと、自分が価値ある存在と思える嬉しさが混ざり合った、とてもいい顔だ。キャメロン・ディアス、 いいなぁとあらためて思った場面だった。

 トニ・コレット、シャーリー・マクレーンそれぞれに味があっていいが、個人的にはローズの新しい恋人を演ずるマーク・フォイア スタインの誠実な個性に惹かれた。
  【◎△×】7

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