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【 映画雑感 】No.134

ザ・コンテンダー


2000年  アメリカ  127分
監督 ロッド・ルーリー
出演
ジョーン・アレン、ゲイリー・オールドマン、ジェフ・ブリッジス
クリスチャン・スレイター、サム・エリオット、ウィリアム・ピーターセン

  ストーリー
 任期途中で急死した副大統領の後任として、エヴァンス大統領(ジェフ・ブリッジス)はレイン・ハンソン上院議員(ジョーン・ アレン)を指名する。全米初の女性副大統領の誕生に世論は沸き立つが、保守的な長老議員たち、なかでも大物政治家シェリー・ ラニヨン(ゲイリー・オールドマン)はいい顔をしない。
 対立候補のハサウェイ知事(ウィリアム・ピーターセン)と親しいこともあって、ラニヨンはさまざなま妨害を図るうち、レインの 過去のセックス・スキャンダルの情報を手に入れる。副大統領としての承認を得る下院司法委員会の聴聞が始まるが、レインはこの件に 関して一貫してノーコメントを貫く。

  一口感想
 副大統領というのは、大統領が指名したら決まり、と私は単純に思っていたが、議会の承認が必要で、そのためには司法委員会の 聴聞会で、適不適の審査を受けなければならないらしい。この時に過去の生活歴全般にわたって調査がなされる。
 ミスや傷のない人間なんていないから、多少のことは「人間的でいい」と問題にされないけれど、時には致命的なスキャンダルになる こともある。溜め息が出るほどの大ごとだ。

 聴聞会の議長を務めるラニヨンは、老練な政治家だけれど、保守的で、副大統領候補が女性ということが気に入らない。候補のレイン・ ハンソンを失脚させようとする。ラニヨン自身は真面目な政治家 だ。姑息な手段も弄しても、悪意でやっているわけでない。“国の ため” と心底から信じ、正義を行っているつもりだ。そこが怖い。
 扮するゲイリー・オールドマンは『レオン』や『ハンニバル』の怪演が嘘みたいに、実直な雰囲気で驚かされる。

 レインの調査をしているうちに、ラニヨンは格好の情報を入手する。彼女の学生時代のセックス・スキャンダルだ。レインはこのことについて、一切の言及を拒否する。過去のプライバシーと現在の政治信条はかかわりがない、弁明や釈明をすれば相手と同じレベルに自分を貶(おとし)めることになる、自分は過去を恥じていない、と言い切る。
 人間の本質ってこんなところに表れる。レインの態度は毅然としていて立派だと思う。
 彼女は若い下院議員のウェブスター(クリスチャン・スレイター)に、「男性が何人の女性と寝ようとだれも問題にしない。女性だって 同じはずだ」という。

 中絶容認派のレインを、“ベビー・キラー(赤ん坊殺し)” と口を極めて罵るラニヨン。「私は中絶擁護派ではなく、女性の “中絶を選ぶ自由、権利” を擁護しているのです」と冷静に答えるレイン。ラニヨンが「女性が赤ん坊を殺す権利を認めるのか」と食い下がると、レインは「私は政治信条を述べています」と切り返す。聴聞会での2人のやり取りは緊張感に満ちて、すごい迫力だ。

 ラニヨンの妻が過去に中絶しており、それを持ち出せば彼を決定的に追い詰めることが出来るのだが、レインは口から出掛かるのをかろうじてこらえる。言ってはならないことを言わずにおれるというのは、とても勇気のいることだ。初めはラニヨン派だったウェブスターが徐々にレインの政治家としてのすぐれた資質に気づいていくのも、もっともだと思う。
 窮地に追い込まれながらも、政治家としての矜持を保つレインを、ジョーン・アレンが好演。

 結局このスキャンダルは、レインが名門の令嬢であるために面白半分に立てられた噂であることが最後に明らかになるのだが、この 辺りは “健全なるアメリカ” 映画の限界だろうか。話が綺麗ごとになってしまった感じで、私としては残念。

 ジェフ・ブリッジスが扮する大統領は、腹の底が読めないところがいかにも政治家らしい。女性の副大統領を立てるのが 単なる人気取りなら、スキャンダル発覚の時点で切ってもよさそうだが、それはしない。といってあくまでレインを守る気なのかも はっきりしない。
 ラニヨンやハザウェイを陥れる手腕は見事、かつそうとう悪辣。若造のウェブスターに脅しをかける時の相手の反応を楽しむゆとり、 秘書にランチを注文する時の無邪気さなど、いろんな顔を見せつつ、どの顔も本当でないという感じなのだ。

 ラニヨンが、「任期中、妊娠したらどうするつもりか(国政を放り出して、産休を取るつもりか)」と既婚のレインを追及する場面 もあって、映画は途中から、政治ドラマなのか女性問題を扱ったドラマなのか、軸足がやや曖昧になったのが惜しい。しかし、政界の 駆け引きがリアルに描かれていて、とても面白かった。
  【◎△×】7

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