| 【 映画雑感 】No.133 |
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ストーリー ギネスブックにも載った長寿シリーズとして、最終作となった1995年の『寅次郎 紅の花』まで全48作が作られた『男はつらいよ』 のシリーズ第1作。シリーズの基本パターンがすでに出揃い、完成度の高い1本となっている。 中学の時に父親と喧嘩して家を飛び出し、香具師(やし)となって全国を渡り歩いていた車寅次郎(渥美 清) が、久しぶりに故郷の東京・葛飾柴又のだんご屋 “とらや” に帰ってくる。両親が死んだことを風の噂で聞いたのだ。突然、訪れた 寅次郎に叔父夫婦(森川 信、三崎 千恵子)と妹・さくら(倍賞 千恵子)は驚く。
寅次郎はさくらの見合いの席をぶち壊してしまうが、そのためにかえって隣りの印刷工場の工員・博(前田 吟)とさくらが結ばれる。
寅さんは帝釈天の御前様(笠 智衆)のお嬢さん・冬子(光本 幸子)に恋をし、そして失恋。また旅に出て行く。*メモ おいちゃん役は最初は森川信が演じたが、72年3月に肝硬変のため死去、第9作『男はつらいよ 柴又慕情』から松村達雄に、 さらに第14作『男はつらいよ 寅次郎子守唄』から下条正巳に交代、最終作まで演じた。 帝釈天の御前様役の笠智衆は、93年3月に亡くなり、92年の第45作『男はつらいよ 寅次郎の青春』が遺作となった。 寅さんの渥美清はもちろんのこと、妹さくらの倍賞千恵子、その夫・博の前田吟、おばちゃんの三崎千恵子、博の勤める印刷工場の 社長の太宰久雄らの出演者は最後まで変わらなかった。 シリーズは27年間、第48作まで続いたが、96年8月に渥美清が肺ガンで亡くなり、惜しまれつつ終了した。 おいちゃんとおばちゃんが妙に畏まって挨拶している。寅さんのわけ知り顔のデカイ態度は相変
わらずだけど、なんだかちょっと違う。よくよく見たら、寅さんがネクタイ締めている。これには驚いた。もちろん、すぐにいつもの「ダボシャツに腹巻き」スタイルになってしまうけれど。他に寅さんがネクタイ姿で登場する作品はあったかしら。全部を見たわけじゃないけど、第1作だけじゃないかなぁ。この時の寅さんは、堅気の仕事にもどる気があったのかな、とふと思う。彼のことだから、おくびにも出さないけど。 川船のなかで、博に「兄さんは(まださくらに愛を打ち明けてもいないのに、博はもう寅さんをこう呼んでる!)好きな人の兄さん から、大学出てないから結婚なんかダメだっていわれたらどうします」といわれて、きょとんとするシーンがおかしい。 寅さんにはこういう込み入った言い方は通用しないのだ。好きな人、といわれて帝釈天のお嬢さんを思い浮かべて、「兄貴なんか いねえよ」と答える。「もしも、ですよ」。答えに窮した寅さんは、
「お前と俺は人間が違うんだよ。早いとこいって、俺が芋食ったらお前が屁するか? な、違う人間だろ」と逃げる。この頃の博はまだ分かっていない、寅さんには “もしも” という形で何かを仮定したり想像することは無理だということが。寅さん の恐るべき超リアリストぶりが発揮された場面で吹きだしてしまう。 「理屈で人は動かないよ」と偉そうに博を諭すが、まったく理屈が 通用しないのも困る。この場面を見ていると、彼は永遠の子どもだ、とつくづく思う。この幼児性が寅さんの魅力でもあり、周囲が振り回される困った点でもあるのだ。 「労働者、諸君!」は今回は出てこなかったが、「けっこう毛だらけ猫灰だからけ、お尻の周りは〇〇だらけ」などの迷セリフが てんこ盛りで出てくる。叩き売りのセリフも、渥美清が若いだけに勢
いがあって楽しい。倍賞千恵子、前田吟もみんな若い。博が
さくらに愛を告白するシーンなんて、その純情ぶりに思わずジンとしてしまった。おいちゃんの森川信が懐かしい。彼の「バッカだねぇ。ほんとにバカだよ、あいつは」の口調が私はとても好きだった。温かみがある。 下町の人情ってこんなんですよ、というのがそのまま表れている。 次の松村達雄はもともとが皮肉っぽいキャラクターのせいか、口調にちょっと険がある。下條正巳は距離を置いて見ているような、 冷やっこいとこがある。私にとってのおいちゃんはやっぱり森川信だとあらためて認識。三崎千恵子のおばちゃんはもう言うことなし、太宰久雄の隣の “タコおやじ” も若い。まるでもう同窓会の写真を見ているみたいだ。 【◎○△×】7 |