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【 映画雑感 】No.127

グリフターズ 詐欺師たち


1990年  アメリカ  109分
監督 スティーヴン・フリアーズ
出演
アンジェリカ・ヒューストン、ジョン・キューザック、アネット・ベニング
パット・ヒングル、J・T・ウォルシュ

  ストーリー
 ロサンゼルスを舞台に、3人の詐欺師たちの生き残りをかけた騙しあいを描いたハードボイルドなラブ・サスペンス。
 25歳の好青年、ロイ(ジョン・キューザック)はじつはケチな釣り銭詐欺師だ。バーで小銭を稼ぐ浮き草稼業のある日、バーテン ダーに手口を見破られ、腹にパンチを食らって重体になる。
 競馬のノミ組織で働く母親リリー(アンジェリカ・ヒューストン)は、8年ぶりに再会した息子の世話をするが、そのために、賭ける べきレースに遅れ、大損したボスのボーボー(パット・ヒングル)から制裁を加えられる。
 ロイの恋人で宝石詐欺師のマイラ(アネット・ベニング)は、大掛かりな詐欺をロイに持ちかけるが、相棒は持たないことにしている ロイは断る。リリーとそりの合わないマイラは、彼の弱腰はリリーが原因だと逆恨みし、彼女が車のトランクに大金を隠していることを 組織に密告してしまう。

  一口感想
 ロイは釣り銭詐欺やいかさまカードで小銭を稼ぐケチな詐欺師だ。その日その日が楽しければいい。こんな役のジョン・キューザック は最高にチャーミング。憎めない小悪党ぶりを発揮する。
 恋人マイラもこれまた詐欺師、色仕掛けで偽宝石を売っている。アネット・ベニングがキュートでセクシー。というわけで、楽しい ラブ・コメ風の展開を予想していたら、話は意外にシリアスだった。

 布石はいくつかある。まず、ロイがいかさまを見抜かれて大怪我を負い、その世話をしていたために、母親のリリーが仕事をしくじる こと。
 彼女は競馬の賭け倍率を操作するというヤクザな仕事をしている。14歳でロイを生み、ロイが17歳で家出して以来、互いに音信 不通、これまで母親らしいことはなに1つしてこなかった。
 8年ぶりに再会して息子の様子がおかしいと気づき、むりやり入院させる。彼女にも母性はあったというわけだ。
 しかし、この時の失敗でリリーはボスにリンチされる。というか、舐めた真似するとひどい眼に遭うぞ、と脅されるだけなんだけど、 リリーの腹の底まで震え上がってる様子があんまり真に迫っていて、ほんとに怖い。何しろアンジェリカ・ヒューストンがあのド貫禄で 怯えてみせるんだから、迫力 がある。

 もう1つは、女としてもまだ十分通用する魅力的な母親と息子の恋人との、嫁姑の関係にも似た敵対心だ。
 見舞いに来たマイラと、リリーがロイのベッドを挟んで火花を散らす丁々発止のやり取りは、女ながらにおっかない。ジョン・キューザックってぼんぼん風の甘ちゃん顔だから、こんな時は間にはさまった彼につい同情してしまう。
 この2つが通奏低音のように響いて、ストーリーに緊迫感をもたらし続ける。

 マイラはキュートな見かけによらず、けっこう大した女で、過去に大物詐欺師コール(J・T・ウォルシュ)と組んで大仕掛けな信用 詐欺を働いていた。その時の味がいまだに忘れられない。
 セールスマンだといっていたロイが本当は詐欺師だと気づいてからは、夢よもう一度、とばかりに信用詐欺の再現をもちかける。
 所詮はケチな釣り銭詐欺師のロイ、びびり上がって彼女から逃げ出そうとする。ロイの器量はせいぜいその程度なのだが、惚れた弱み か、マイラは気づかない。弱腰は母親の入れ知恵と曲解する。リリーは自分のことは棚に上げて、ロイに「堅気になれ」と説教していた からだ。
 この辺りから、話は俄然、女と女のハードボイルドな足の引っ張り合いになっていく。ジョン・キューザックには気の毒だけど、 「どこにいるの」状態に、彼の影は薄くなる。

 マイラはしつこくリリーを尾行し、彼女が組織の大金を着服していることを嗅ぎつける。
 マイラが競馬場のビルの2階から遠視しているとも気づかずに、トランクを開けて金勘定するリリー。ばっちり目撃し、どういう金か すぐ察知するマイラ。この場面はすごくスリリングだ。
 ボスにチクられたと気づいたリリーは、必死に逃亡を試みる。ボスの怖さを身に沁みて分かっている観客は、リリーの恐怖に感情移入 しないではいられない。一方、ロイはマイラとの騒動に懲りて、本気で堅気になろうと思い始めている。男は平凡な小市民の暮らしを 望み、女は大胆な賭けに人生を夢見る。この対照が面白い。

 映画のラストはまったく思いがけなくて、初見の時はほんとうにびっくりした。二度目は、結末を知っているのにそれでもドキドキ した。それほどショッキング。ジョン・キューザックにこういう結末を用意するなんて、スティーヴン・フリアーズ監督は只者でない。
 リリーは呆然としながらも、散らばった金をかき集める。息子の身体に取りすがって泣いている暇はないというところだ。自分1人 生き延びちゃうんだから、女の性(しょう)ってつくづく強い。
 スーツケースをしっかり抱え、悄然と夜の闇に消えるリリー。でも、どこまで逃げてもボスの手は執拗に追ってくるんじゃないのか なぁ。すごい映画を見ちゃった、あー、こわ面白かった。
  【◎△×】8

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