| 【 映画雑感 】No.112 |
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ストーリー 貧しい金鉱掘りから一代で国会議員にまでなった農場主エステバンを中心に、南米のある富豪一家の1920年代から50年間に およぶ激動の運命を描いた大河ドラマ。『ペレ』(87)のビレ・アウグストが映画化、各国の個性派スターが共演している。 1928年のチリ。名家の末娘クララは、姉ローザにプロポーズしに来た貧しい若者エステバン(ジェレミー・アイアンズ)に一目で 恋をする。彼女は不思議な霊能力を持っていたが、父の身代わりに毒殺された姉の死を予知しながら救えなかったことから、口を 利かない少女となる。 エステバンはローザを失った悲しみから懸命に働き、大農場を作り上げる。20年後、故郷に戻った彼は成長したクララ(メリル・ ストリープ)と再会する。 50年に渉るエステバンとその家族の運命を、チリの激動の歴史を背景に描いており、ずっしりした手応えが残る。 貧しい鉱夫から国一番の農場主、さらに上院議員にまで上りつめたエステバン、“精霊” と対話する不思議な能力を持つ妻クララ、 小作人の息子ペドロを愛する娘のブランカ(ウィノナ・ライダ
ー)、彼らを愛しながら、自らは孤独のうちに死ぬエステバンの姉
フェルラ(グレン・クロース)、労働思想に目覚め革命の闘士となるペドロ(アントニオ・バンデラス)、かつてエステバンが犯して
捨てた村の娘から生まれたエステバン・ガルシア(ヴィンセント・ギャロ)。登場する人物の1人1人がみな魅力的な物語を紡ぐ。なかでも、私はフェルラとエステバン・ガルシアの運命に惹かれた。 フェルラは年の離れた弟エステバンを母親代わりに育て、エステバンが家を出た後は病気の母を看取り、最後はエステバンの邸宅に 身を寄せて、家政婦代わりにエステバン一家の面倒を見 る。結婚もせず収入もない寄る辺ない身とはいえ、彼女の献身にはそういう ものを超えた愛情が
感じられる。義妹クララとの間には真の姉妹のような絆が結ばれる。しかし、なぜかエステバンはこうした姉をうとみ続け、ついには邸から追い出してしまう。彼が実家で、病気の母とその世話する 姉を嫌悪の表情で見るシーンがある。彼にとって、姉は過去の極貧の生活を象徴する呪わしい存在に思われたのだろうか。 フェルラは粗末な部屋で孤独な死を遂げる。駆けつけたクララが、今は無言でベッドに横たわるフェルラを見つめるシーンが、胸を衝く ように哀しい。グレン・クロースの静けさを湛えた演技が素晴らしい。 エステバン・ガルシアは、一片の愛情もかけず、小作人として冷酷に扱う父・エステバンへの憎しみを人生のバネにして、生きてきた ように見える。 少年の頃、エステバン・ガルシアが父・エステバンの豪奢なの邸に忍び込み、幼いブランカと出会うシーンがある。穴だらけの セーターを着たエステバン・ガルシアと、瀟洒な白いドレスのブランカ。同じ男の血を受けながら、あまりに違う2人の境遇。美しい 幼女を見て、彼が心中にどんな思
いを抱いたか、想像に難くない。軍部がクーデターによって政権を奪取した時、ブランカを拷問して人民戦線のリーダー、ペドロの所在を吐かせようとするのは、 エステバン・ガルシアなのだ。暗い情念を秘め、食い入るようにブランカを見つめるヴィンセント・ギャロの眼が印象的だった。 エステバンの頑迷さは周囲の多くの人々を不幸に陥れるけれど、一方で、富と名声を得るほど彼は家族の信頼を失い、孤独の渕へと 追いやられていく。そして、最後に彼は時代の変動を見抜けなかった自らの不明を悟り、ペドロの亡命の手助けをする。 時代に翻弄された男の強さも弱さも、ジェレミー・アイアンズはあますことなく演じきった。 【◎○△×】7 |