| 【 映画雑感 】No.85 |
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ストーリー 1920年、メリーランドの名門の令嬢レズリー(エリザベス・テイラー)は大牧場主ビック・ベネディクト(ロック・ハドソン)と 結婚してテキサスにやって来る。 彼の牧場は9万エーカーという途方もない広さを誇っていた。東部育ちのレズリーには想像を絶するつらい生活だったが、ビックの 姉で主婦格のラズ(マーセデス・マッケンブリッジ)の死をきっかけに、自らの意志を貫き、大勢の家族や使用人との生活を切り盛り していこうと決意する。ひねくれ者の牧童ジェット(ジェームズ・ディーン)も彼女の前では心を開くのだった。 20年代初めから50年代中ごろまでのテキサスを舞台に、大牧場主と東部出身の妻、彼女に恋心を抱く孤独な牧童の3人を中心に、 物質文明に押し流されていく古きよき開拓時代の西部の姿を描いている。 ジェットを演じたジェームズ・ディーンは撮影終了直後に世を去り、前年の『エデンの東』に続いて、故人でありながらアカデミー 主演男優賞にノミネートされた。 中学生の頃、『エデンの東』に夢中だった私はジミー目当てで本作を見て、彼がちょび髭の “ヘンなおじさん” になって出てきた のにがっくりした記憶がある。今になってあらためて見ると、雄大なスケールのなかに、大西部テキサスの変転がビック一家を通して 描かれていて、なかなか見応えがある。 邦題の『ジャイアンツ』はあたかも複数のような印象だが、原題は “Giant” と単数だ。 “巨人”=テキサス、この映画の 主役はテキサスそのものなのだと思う。 物質文明が台頭し、時代の奔流を前に変わっていかざる得ない西部の姿が、ビックとレスリーの夫婦愛や彼らの家族の葛藤を軸にして 浮き彫りにされていく。さらに、メキシコ人への差別や、東部と西部の文化・価値観の違いなども織り込まれ、壮大なスケールにも 関わらず、きめの細かい人間ドラマとなっている。
祖父の代から受け継いだ広大な大牧場こそテキサスの命であり、男の仕事と信じて疑わないビックは、いわば伝統的な西部の男だ。
しかし、当然跡を継ぐと思っていた長男は医者を志し、代わりに後を託そうと思った娘婿も、小牧場を近代的な方法で経営するという。大牧場に誇りを持って生きてきたビックの足元にも、容赦なく時代の波が寄せてくる。そして、この土地に油田が発見されるに及んで、 石油の生み出す莫大な利益の前に、ついにビックも屈せざるを得なくなるのだ。 子どもたちはそれぞれの道に巣立っていき、もはや家長として彼らをコントロール(支配)することは出来ない。牧場も油田採掘権と 引き換えに手放した。「自分は人生に失敗したらしい」というビックは、今にも倒れようとする “大西部” という名の巨木のようだ。 しかしそんな彼に、レスリーは「あなたは失敗者ではない」と静かに答える。さまざまな出来事をともに歩んできた夫婦ならではの 会話だ。時代の変転を超えて家族は生き残っていく、という感慨を覚える。
エリザベス・テイラーは、これまで何本かの映画を見たが、本作の彼女が私は一番好きだ。彼女が扮するレスリーは、美しいだけで
なく、東部の名門令嬢から西部の牧場主の妻へと、まったく未知の環境に飛び込み、果敢に信念をもって生きていく。ひねくれ者のジェットも、レスリーにだけは心を開くのだ。通りがかりに小屋に立ち寄ったレスリーに、彼がいそいそとコーヒーを 振る舞うシーンは、孤独なジェットのレスリーへの慕情を感じさせて、切ない気持ちになる。 メキシコ人の小屋に立ち寄って、彼らの悲惨な生活に驚いたレスリーが、ビックと対立してでも彼らのために医者を手配するくだりも 心に残る。強さだけでなく、優しさ、柔らかさをもテイラーは自然体で演じていて、彼女の地に足のついた演技力が、レスリーに リアルな存在感を与えていると思った。 ロック・ハドソン、ジェームズ・ディーンも好演。油田を発見したジェットが、身体中を黒い石油で光らせて、ビックの屋敷に車で 乗りつけてくるシーンは、彼の鬱屈した劣等感が、裏返しの尊大さや高揚感となってギラギラ放射され、胸苦しいほどだ。 ビックが、かつては蔑視していたメキシコ人のために、彼らをつまみ出そうとしたレストラン店主と殴りあうシーンも、眼前で メキシコ人の妻を侮辱された息子へのいたわりや、自分の中に今もある差別意識に対するやましさなど、ビックの複雑な感情が 感じられて、印象的だった。 【◎○△×】8 |