HOME雑感LISTシネマTOP




【 映画雑感 】No.84

マルコヴィッチの穴


1999年  アメリカ  112分
監督 スパイク・ジョーンズ
出演
ジョン・キューザック、キャメロン・ディアス、キャサリン・キーナー
オースン・ビーン、メアリ・ケイ・プレイス
ジョン・マルコヴィッチ、チャーリー・シーン

  ストーリー
 しがない人形使いのクレイグ(ジョン・キューザック)は、ペットショップに勤める妻ロッテ(キャメロン・ディアス)と貧乏な2人 暮らし。定職に就こうと、マンハッタンにあるビルの7と1/2階にある不思議な会社に就職する。
 ある日、落とした書類を拾おうとキャビネットを動かすと、壁に大きな穴が開いていた。興味を引かれてもぐっていくと、たどり 着いたのは俳優ジョン・マルコヴィッチ(ジョン・マルコヴィッチ)の頭の中だった。
 そこでは誰でも15分間マルコヴィッチになることが出来る。クレイグは同じビルで働く美人OLマキシン(キャサリン・キーナー) と、この穴を利用して商売を始める。行列のできる大繁盛に、異変を感じたマルコヴィッチは親友のチャーリー(チャーリー・シーン) に相談するのだが・・・。
 スパイク・ジョーンズ監督の長編デビュー作。アカデミー賞で助演女優賞・監督賞・脚本賞の3部門にノミネートされた、異色の ファンタジック・コメディ。

  一口感想
 エレベーターのドアを金棒でこじ開け、アラームがけたたましく鳴るなかで、出たり入ったりする1/2階。このアイデアにまず 仰天する。中に入れば、天井が低くて、みな小腰をかがめて歩いている。椅子に座ってどうやらやっと頭をまっすぐ上げられる、という 具合。
 受付け嬢はトンチンカンな会話をするし、社長はすっかり彼女に洗脳されて、会話が通じないのは自分が言語障害のせいだと思い こんでいる。まるでアリスが迷い込んだ “不思議の国” みたいだ。
 オープニングから一連の奇妙な疾走感が素晴らしいだけに、クレイグやロッテがジョン・マルコヴィッチの頭の中に入ってからの 流れが、ちょっとモタモタする。“マルコヴィッチになる(原題)” ってどんな感じ?というのが、感覚としてうまく伝わってこない のだ。
 事務室のおかしな穴にもぐって行く時はだれでも、マルコヴィッチが感じること、考えることを体験したい!という強烈な願いを 持っていると思う。それだけマルコヴィッチって摩訶不思議な俳優だ。いったい彼以外のどんな俳優が、こんな奇抜なアイデアを 実現させられるだろう。。
 その「マルコヴィッチならでは」が、あまりうまく生かされていない気がするのだ。
 ロッテは “彼” の中に入ったことで、自分の中の男性に目覚めてしまう。その一方で、マキシンは “彼” の中にいる “彼女” に 恋して、自分の中のホモセクシュアリティに目覚める。これまで自然に信じていた自分の “性” が、マルコヴィッチの中に入り込む ことで揺らいだり混乱したりするのだ。
 これに本来のマルコヴィッチの性癖とか性格傾向がもっと絡められたら、映画の奇妙な味わいはぐんとアップしたんじゃないかと 思う。

 それでも、この映画は非常に衝撃的で面白い。マルコヴィッチ自身がこの穴をもぐったらどうな るのか?という、だれでも当然抱く疑問を彼が実行するシーンなどは、もう抜群だ。
 彼はなんと自分の潜在意識にたどり着いてしまうのだ。豊満な胸を持つマルコヴィッチ、欲望のままに料理をむさぼり喰うマルコ ヴィッチ、横たわって妖艶に歌うマルコヴィッチ、客もウェイターもだれも彼も、あっちを見てもこっちを向いても、マルコヴィッチ、 マルコヴィッチ、マルコヴィッチ・・・。
 はげ頭のマルコヴィッチがぞろぞろする情景はまさに悪夢! なのに爆笑してしまう。マルコヴィッチの面目躍如たる場面だ。

 こういう荒唐無稽な話をどう着地させるかはそうとうの難問だ。本作では、マルコヴィッチは永遠の命をつなぐ “器” の1つに 過ぎなくて、その器はマルコヴィッチの身体を借りたロッテとマキシンのセックスで生まれた娘に受け継がれる。つまり、最後は “マル コヴィッチ” という素材を手放して、不老長寿のほうに話は行ってしまう。
 私としてはこういう手垢の付いたオチに持っていかず、最後までシュールに突っ走ってほしかった。たとえば、クレイグはマルコ ヴィッチの身体を乗っ取てしまうのだが、最後は彼自身が自分の操る人形に身体も意識も乗っ取られ、たった1人舞台でクルクル踊る とか・・・。
 クレイグの人形はあまりにリアルで美しいので、倒錯的で不思議な終り方になったような気がするが、どうだろうか・・・?
  【◎△×】7

▲「上に戻る」