| 【 映画雑感 】No.76 |
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ストーリー 1954年6月にニュージーランドで実際に起きた殺人事件を題材に、思春期の少女が殺人に至るまでを描いた異色の心理ドラマ。 『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督が映画化、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した。 ニュージーランド、クライストチャーチ。貧しい下宿屋の娘ポーリーン(メラニー・リンスキー)は、作家を夢見る無口な女子高生だ。 ある日イギリスから、名門大学の学長の娘ジュリエット(ケイト・ウィンスレット)が転校してくる。 正反対の家庭に育ちながら、豊かな感性や孤独な心に共通点を見出して意気投合した2人は、“ボロヴィニア王国” という空想の 世界を作り上げ、他人を寄せ付けないほどの深い絆で結ばれる。親たちは娘たちの親密な関係を同性愛と決め付けて、2人を引き 離そうとする。 やがて病弱なジュリエットが療養のために外国に行くことになり、ポーリーンは母親さえいなければ自分もジュリエットとともに 旅立てると思い込む。 今は哀しいことに、子どもの親殺しにはそれほど驚かない時代になってしまったが、当時はさぞ衝撃的な事件だったろうと思う。しかし 見終わって、“母親殺し” という陰惨な印象はあまりない。それはこの映画が空想癖の強い思春期の少女たちが陥った悲劇として、 彼女たちを深い愛情を持って描いているからなのだろう。 ポーリーンは冴えない風貌とは裏腹に、豊かな想像力を持っていて、将来作家になりたいという夢を持っている。しかし、両親は もとより、学校でも、彼女はは風変わりな子くらいの認識しかされてなかったのではないかと思う。 そこへ転校してきたジュリエットは、大学教授の父を持ち、ポーリーンとまったく逆の環境にありながら、驚くほど似た感性を持って いた。しかも、教師をへこませるほどに頭がよく、才気がはじけて、きらきら耀いている。孤独なポーリーンが彼女に夢中になったのは当然のことだったと思う。
でも、一見華やかなジュリエットも、ポーリーンとは違う意味で孤独な少女だった。太めのケイト・ウィンスレットが演じているので
あまりそんな感じがしないが、ジュリエットは体の弱い少女だったらしい。母親の「Good for health(健康にいい)」の一言で、次々と転地療養させられ、そのたびに両親から離れ、友達も 出来なかった。ジュリエットがいつも理由の分からない不安感を抱いていたのは、彼女が親の愛の薄い子どもだったからだろうと 思う。 ポーリーンの両親は凡庸な人間だけれど、豊かな愛情を持っている。しかし彼女はそれを「束縛」と感じ、うるさがる。一方、 ジュリエットは無関心な親の愛を求める。思春期特有の親に対する矛盾した心理を、2人がちょうど分け持つような形で表わしている。 ポーリーンとジュリエットが2人だけの空想の世界をどんどん膨らませ、ついには母親を殺すところまでいってしまうのは、正直 言って突拍子もない感じを持つ。しかも、ターゲットになるのが、平凡だけれど家庭的なポーリーンの母(サラ・パース)なのだ。 しかし、これが実際の事件だったとなれば、そうなのだ、と思うしかない。2人だけの閉じた世界に入り込んだポーリーンと ジュリエットは、そんな形で爆発するしか出口を見出せなかったのだろうか。 2人の作った聖なるものたちの国 “ボロウィニア王国” の住人は、ポーリーンが作った粘土の人形たちだ。その土の感触が素朴で、稚拙で、思わず微笑を 誘われる。(CG処理なのだろうか、彼らに交じって2人がダンスする舞踏会のシーンが素晴らしい。粘土遊びをした子供時代の遠い記憶を 呼び起こされ、なんともいえぬ懐かしい気分になる。) しかし同時に、この稚拙さが彼女たちの心の幼さを表わしているようにも感じられ、微笑がいつか苦いものへ変わっていくようだった。 【◎○△×】7 |