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【 映画雑感 】No.70

さよなら子供たち


1987年  フランス/ドイツ  103分
監督 ルイ・マル
出演
ガスパール・マネッス、ラファエル・フェジト、フランシーヌ・ラセット
フランソワ・ネグレ、フィリップ=モリエ・ジェヌー

  ストーリー
 ナチス占領下のフランスを舞台に、少年たちの友情と別離が映しだされる、ルイ・マル監督の自伝的色合いの濃い作品。ヴェネチア 国際映画祭で作品賞を受賞した。
 12歳のジュリアン(ガスパール・マネッス)は、兄とともにパリ郊外のカトリック寄宿学校に疎開している。そこへ3人の転校生が やってくる。
 ジュリアンは、そのうちの1人、ジャン・ボネ(ラファエル・フェジト)がみなに打ち解けようとしないのが気にかかる。ある日、 彼のロッカーをこっそり覗いたジュリアンは、ジャンがユダヤ人だと知る。次第に親しくなった2人は、森の宝探しのハプニングで いっそう親密さを増してゆく。
 ある朝、学校から解雇された料理番のジョセフ(フランソワ・ネグレ)の密告で、ジャンら3人の転校生と彼らを匿 (かくま)った校長のジャン神父(フィリップ=モリエ・ジェヌー)がゲシュタポに連行され、学校は閉鎖されてしまう。

  一口感想
 寄宿学校の子供たちの生活がとてもリアルだ。竹馬で身体をぶつけ合っての遊びがいつの間にか本気の喧嘩になったり、向こうの 物陰では上級生たちがこっそりタバコを吸っていたり、休み時間が終わると教師が生徒たちを教室に追い立てたりする。子供たちの 演技があまりに自然で、映画であることを忘れてしまいそうになるほどだ。
 数学の授業中に空襲警報が鳴り、防空壕に避難するシーンが面白い。いつものことだといわんばかりに、教師は「(−5)の二乗と (+5)の二乗は同じになる。累乗は面白いぞ」なんて言って、そのまま授業を続ける。生徒たちも懐中電灯で教科書を照らして ふざけ合っている。
 ナチスに占領下の暗い時代の空気は、疎開をかねて私立学校に寄宿している子供たちにもおおいかぶさっているのだけれど、子供は あくまで屈託がない。

 しかし、そのさりげない描写の中に、小さな布石がいくつも丁寧に置かれていく。まず転入生のジャン・ボネ。彼は3人のユダヤ 少年の1人として、校長にこの学校に匿われているのだが、両親の消息は知れない。彼にどことなく翳りがあるのは当然のことだ。
 私が胸を衝かれる思いをしたシーンがある。教室に入ってきたゲシュタポが、ジャン・ボネの前に立ち「お前だろう」とでも言うように じっと見つめると、彼はなにも言わず立ち上がり、黙って同級生たち1人1人と別れの握手をするのだ。
 「いつか捕まると思っていた」と、彼は自室で荷物をまとめながらジュリアンに言うのだが、わずか12歳の少年が、その不安と 恐怖、覚悟のなかで日々を暮していたのだ。
 戸口で振り返って小さくジュリアンに手を振ったジャン・ボネ。彼はのちに他の2人の少年と一緒にアウシュビッツで死んだという。 痛ましさで胸が潰れそうになる。

 そして料理番ジョセフの存在。彼は生徒たちのほしがる切手やタバコと引き換えに、高価なジャムなどを少年たちから手に入れ、闇に 流している。どうやって知ったのか、3人のユダヤ少年の正体も嗅ぎつけていた。はしっこく油断ならない青年だ。しかし、台所の下働きで追い回されるジョセフは、同じ年頃の富裕な少年たちの暮らしをどんな思いで見ていたのだろう。
 闇行為がばれて校長から解雇を言い渡された時、彼は「行くところがない」「止めさせないでほしい」と懇願する。彼には彼なりに 厳しい戦時下を生き延びようとする必死の思いがあったのだ。
 彼は密告した自分を非難するように見るジュリアンに、「これが現実だ。きれいごとじゃない」と言い放つ。ジョセフの中に富裕な 少年たちへの羨望や、惨めな自分の境遇への怒り、首にした校長への復讐心が渦巻いていたことだろう。
 密告なんて卑劣以外の何ものでないけれど、そんな行為に駆り立てられたジョセフへの哀れさも、また私の中では消しがたい。

 そして、敢然と自分の正義を貫き通し、匿った3人のユダヤ少年たちとともに連行されて行った校長のジャン神父。彼は、生徒たちの 「先生」「先生」と呼ぶ声に、「さよなら子供たち。また会おう」と応えて去っていく。そして、彼もまたマウトハウゼンの収容所で 死ぬ。
 厳冬の1月の朝の記憶。連行されるジョン・ボネや神父の姿。本作はルイ・マル監督の自伝的作品だそうだが、この少年の日の 別れは、40年の月日を経なければ、とうてい人に語れないほどの強烈な体験だったのだと思った。
  【◎△×】8

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