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【 映画雑感 】No.66

ショコラ


2000年  アメリカ  121分
監督 ラッセ・ハルストレム
出演
ジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップ、ジュディ・デンチ、
レナ・オリン、アルフレッド・モリーナ、ピーター・ストーメア
キャリー=アン・モス、ヴィクトワール・ティヴィソル

  ストーリー
 フランスの片田舎。因習に閉ざされた小さな村に、ある日、謎めいた女ヴィアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)が娘アヌーク (ヴィクトワール・ティヴィソル)とやって来て、チョコレートの店を開く。
 初めは冷たい視線を投げていた村人たちも、チョコレートのおいしさに魅了されて、次第に生き生きした情熱を回復していく。
 夫(ピーター・ストーメア)の暴力を逃れ、店を手伝うようになったジョゼフィーヌ(レナ・オリン)、娘(キャリー=アン・モス) との深い確執に悩む老女アルマンド(ジュディ・デンチ)らは、ヴィアンヌとの交流を深めていく。
 村に吹き始めた新しい風に、代々村を治めているレノ伯爵(アルフレッド・モリーナ)は脅威を感じる。その頃、河辺にジプシーの 一団が停泊し、ヴィアンヌはリーダーであるルー(ジョニー・デップ)と親しくなる。

  一口感想
 『ギルバート・グレイプ』『サイダーハウス・ルール』のラッセ・ハルストレム監督のハートウォーミングな映画だ。
 舞台はフランスの小さな村。強い北風の吹く日、どこからともなくやって来た母娘が、チョコレート・ショップを開く。カラフルで 不思議な美味しさに満ちたチョコレートは、因習と厳しい道徳に縛ら れた村びとの心を次第に解き放っていく。
 現代の物語なのに、「昔々あるところに・・・」で始まるナレーションと古風な村の佇まいは、まるでおとぎ話のような雰囲気を醸し 出す
 シングルマザー、ヴィアンヌに扮するジュリエット・ビノシュはどちらかというと垢抜けない顔立ちの女優だが、本作では凛として なかなか美しい。
 娘のアヌークは、『ポネット』で泣いてばかりいた小っちゃなヴィクトワールだ。愛らしさはそのままに、ちょっと お姉ちゃんになっての登場だ。
 ジョゼフィーヌを演ずるレナ・オリンはやつれた役をしてもやっぱり色っぽい。夫の暴力に怯える日々を過ごしていた彼女が、 ヴィアンヌのもとでチョコレート作りを覚えながら、徐々に人としての自尊心を回復していく過程が心に残る。

 村人の中傷・非難にもめげずチョコレートを作り、因習に囚われた人々の心を解放していくヴィアンヌは、一見強い女性のように見える。 でも本当にそうだろうか。
 彼女は北風が吹き始めると、誘われるように次の居場所を求めて旅に出る。彼女の人生はこれまでずっとその繰り返しだった。それは チョコレートの持つ魔術的な力と合わせて、ヴィアンヌを 魔女か妖精のような不思議な存在に思わせる。南米出身の母の血がそうさせる、とヴィアンヌは言う。

 でもほんとうは、彼女はひとところに根を下すのが怖いんじゃないんだろうか。放浪生活の本当の意味は、定住から生まれるいろいろ なしがらみや葛藤からの逃走だ。そのなかでもがき苦しむジョセフィーヌの生き方こそ、本当の強さという気がする。
 ヴィアンヌは心に “囚われ” を持っている点では村人と同じなのかもしれない。
 なにものにも囚われない本当の自由さは、ジプシーの青年ルーの中にあるような気がする。
 ルーに扮するジョニー・デップがいい。 彼が画面に現れると一瞬「およっ・・・」と思う。彼のまとう空気が全然違うのだ。現代から取り残されたような中世風の村に、 いきなり今のニューヨークが紛れ込んできたような、不思議な自由さが彼にはある。
 ヴィアンヌが今回は北風の誘いに乗らず、ルーとともに村に留まる決心するのが印象的だ。

 娘のアヌークには想像上の友だち “カンガルー” がいる。一見明るくて屈託がないアヌークだけど、母とともに漂泊の生活を続けて きて、ほんとは寂しかったんだと思う。
 空想の友だちを持つのは幼い子どもにはよくあることだ。大人は「嘘」と勘違いして叱ったりするけれど、子供の寂しさや悲しみを 分かち持つ、大切な存在なのだ。
 ヴィアンヌが村に留まる決意した日、アヌークは、“カンガルー” が 彼女をじっと見つめ、それからぴょんぴょん跳びながら村を 去っていくのを見る。これはアヌークがいつも話しかけていた “カンガルー” がじっさいに画面に姿を現わす唯一のシーンだ。
 もうアヌークはカンガルーを必要としなくなった、彼女は子供時代を卒業し、少女期に足を踏み入れた。そんな思いが胸に湧いて、 このシーンは強く私の心に残った。
 同時に、アヌークの子供時代を支えた “カンガルー” は、ヴィアンヌの漂泊への思いも肩代わりして、どこか遠くへ去っていった ようにも思えた。
  【◎△×】7

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