| 【 映画雑感 】No.60 |
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ストーリー 70年代を舞台にした、家族の崩壊と再生を描いたヒューマン・ドラマ。カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した。 1973年11月。ニューヨークからほど近いコネティカット州の郊外に、2組の家族が住んでいる。1つはベン(ケヴィン・ クライン)とエレナ(ジョアン・アレン)の夫婦と息子ポール(トビー・マグワイア)、娘ウェンディ(クリスティーナ・リッチ)の フッド家。 もう1つはジム(ジェイミー・シェリダン)とジェイニー(シガニー・ウィーヴァー)の夫婦とマイキー(イライジャ・ウッド)と サンディ(ダム・ハン=バード)兄弟のカーヴァー家。豊かな生活を送り、一見、幸福そうな彼らだが、それぞれに問題を抱えていた。 ベンとジェイニーは不倫関係にあり、薄々それに気づいているエレナは情緒不安定から衝動的に万引きに走っていた。寄宿舎から 学校に通うポールはドラッグを覚え、思春期のウェンディは性的な興味からマイキーとサンディを誘惑し、マイキーは自分の世界に こもり、サンディは暴力的な遊びに耽る。 触れたもの全てを凍らせてしまうアイス・ストームが吹き荒れる夜、ついに悲劇が起こった。 中流の生活、年頃の2人の子供、冷えた夫婦仲、情緒不安定な妻、家族はばらばら、と隣人同士の2つの家族はとてもよく似ている。 けれど、違っているところもある。
フッド家には曲りなりにも家庭の匂いが感じられる。寮で離れて暮らす息子は軽いドラッグを試したり、反抗期の娘はセックスに興味津々だったりするけど、まー、普通の中高校生。 体裁を繕った仮面家族っぽいところもあるが、一応家族らしいまとまりは保たれている。 それに比べると、隣りのカーヴァー家は私にはかなり深刻な状況に見える。家の中は家具があまりなく、青ざめた色調で、洗練された インテリアともいえなくもないが、冷え冷えとした空気に覆われている。 プラモデルを爆発させたり、庭木の花を鞭で叩き落す遊びに熱中する次男の様子は、見ていてちょっと不安な気分にさせられる。 ジェイニーは不倫をしていてもそれに燃えるわけではなく、心に深い空虚を抱いているとという感じを受ける。
シガニー・ウィーヴァーが扮するジェイニーは、ゴージャスで洗練されているけれど、なにかがひどく損なわれている、という印象を
与える女性だ。それが、家庭から血の通った温かいものを奪ってしまっている。アイス・ストームが襲った夜、親たちは “キー・パーティ” と呼ばれるきわどい内容のパーティに参加している。 すべてがバリバリに凍った中を、長男マイキーは「こんな日は、空気中の汚い分子は凍って動かない。だから空気はクリーンだ」と いって外に出て行く。 赤いフード・ジャケットを着て、林の中を飛び跳ねるマイキー。彼の姿は大人の汚い世界から遊離しようとする妖精のように見える。 切れた高圧電線から放電される火花に見とれたまま、マイキーはあっという間に感電死してしまう。
彼の死体にすがって父親のジムは泣く。けれど、ジェイニーは息子の死も知らないまま、ベッドに胎児のように丸まって眠っている。
マイキーが死んでも、家族はばらばらのままだ。しかし皮肉なことに、彼の死は隣りのフッド家の再生につながる。なぜならベンは、夫として父親として、家庭を守っていく立場に あることに、遅まきながら気づいたらしいからだ。 週末に帰宅した息子ポールの屈託のない顔を見て、ベンは涙を流す。それはジムの涙とは違って、希望につながっている。ばらばらな 2家族の一方はさらに崩壊の度を強め、一方は再生の道を進み始める。 70年代が舞台になっているが、今の時代にもそのまま当てはまる物語だと思った。 【◎○△×】7 |