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【 映画雑感 】No.57

怪談


1965年  日本  181分
監督 小林 正樹
出演
 【黒髪】三国 連太郎、新珠 三千代、渡辺 美佐子
 【雪女】岸 恵子、仲代 達矢
 【耳無芳一の話】中村 賀津雄、志村 喬、丹波 哲郎、田中 邦衛、花沢 徳衛
 【茶碗の中】中村 翫右衛門、仲谷 昇、中村 雁治郎、滝沢 修

  ストーリー
 【黒髪】  京都に住む武士(三国 連太郎)が貧乏に疲れ、仕官の道を得て、貞淑な妻(新珠 三千代)を捨てて遠い任地へ向った。 家柄、財産に恵まれた新しい妻(渡辺 美佐子)は、我が侭で驕慢であった。いまさらに別れた妻を慕わしく思い、武士はある晩秋の夜、 あばら家と化した家にもどる。妻は機を織りつつ彼の帰りを待っていた。
 【雪女】  武蔵国の若い樵夫・巳之吉(仲代 達矢)は、ある冬の日、薪を取りに入り入った森で、仲間の老人が雪女(岸 恵子)に 息を吹きかけられて死ぬのを目撃する。雪女は「今夜のことを誰かに話したら、必ずお前を殺す」といって姿を消す。
 1年後、巳之吉は偶然出会った美しい娘・お雪(岸 恵子)と夫婦になり、子供にも恵まれて幸せな日々を送っていたが・・・。
 【耳無芳一の話】  ある寺の下働きに芳一(中村 賀津雄)という琵琶の名人がいた。毎夜寺を抜け出し、朝ぐったりして帰る。 不審に思った同輩(田中 邦衛、花沢 徳衛)が後をつけると、彼は平家一門の墓前で恍惚として「平家物語」を弾じていた。
 芳一は平家の怨霊にとり憑かれていたのだ。心配した寺の住職(志村 喬)は彼の身体中に経文を書き、迎えが来ても声を出さないよう 告げる。
 【茶碗の中】  中川佐渡守の家臣・関内(中村 翫右衛門)はある時、茶碗の中に不気味な笑みを浮かべた若い男(仲谷 昇)の顔を 見る。それは茶碗を何度取り代えても現われた。関内は一気に飲みほしたものの、不思議に思う。
 その後、彼は警護の厳しい中川佐渡守の邸内に、あの若い男が佇んでいるのを見つける。関内は式部平内と名乗る男を斬るが、男は 壁の中に消える。自宅に帰った関内を3人の侍が訪れる。彼らは「来月、主君が今日の恨みを晴らしに来る」と告げる。

  一口感想
 怪談めいた話や、幻想譚、奇譚の類は子供の頃から好きで、本をよく読んだ。母親に「早く寝なさい」と叱られるので、電気を消して、 豆電球に本をくっつけて読み耽ったものだ。私のド近眼はそのせいか、とけっこう本気で信じたりしている。
 怖さの点では上田秋成の「雨月物語」に出てくる「吉備津の釜」が一番だった。小泉八雲の「怪談」は幻想的な不思議な感じがして、 この映画に出てくる話は、みなとても印象に残っている。

 本作の【黒髪】は、ラストが安手のホラー映画みたいになってしまって、残念な気がする。40数 年も昔に読んだことなので、私の記憶が違っているのかな、とも思うが、本では翌朝眼を覚ました男が、白骨化した妻を発見して驚愕するところで終っていた。
 髪だけが黒々と艶めいている。その生々しさに男はぎょっとするのだが、それがこの話の怖さにもなっていた気がする。
 ひたすら夫を待ち続けた貞淑な妻の哀れさと、黒髪に残された夫への執念が、子供心に印象的だった。
 映画と原作が必ずしも同じである必要はないと思うけれど、この話に限っていえば、やはりここで終わったほうが余韻が 残ったんじゃないかと思う。

 【耳無芳一の話】は、ストーリーの初めに琵琶法師の語る「平家の壇ノ浦の滅亡」のくだりが長くて、少々だれた。後半、芳一が平家 一門の墓前で語るシーンが出てくるので、前半の語りはあっさり処理してもよかったんじゃなかろうか。
 田中邦衛と花沢徳衛の寺の下働きコンビがストーリーに軽快な動きを作って面白かった。
 ただ欲をいえば、芳一が語っているところにいきなり2人が飛び出してくるのでなく、2人がおっかなびっくり芳一を探している ところに、芳一の弾く琵琶の音が聞こえてくる。そして少しずつ視界が開け、居並ぶ墓を前に憑かれたように語る芳一の姿が現われる、 というような展開だったらなぁ、と思う。

 【茶碗の中】は原作の印象も強烈だった。式部平内とはいったい何者か、なぜ関内のところに出てくるのか。そんなことは 一切説明なし、ただ茶碗の水に男の顔がゆらゆら揺れて現れる。意味のなさが妙に不気味で怖い。
 関内は「エイッ」とばかりに男の幻影もろとも水を飲んでしまう。人の魂を飲むというのはどういうことなんだろう。これだって 考えたら怖い。まるっきりワケが判らないところが妙に心に残ったものだ。
 仲谷昇は見るたび綺麗な人だなぁと思うが、その綺麗さはたしかに妖怪じみたところがある。関内の豪胆な感じも中村翫右衛門は イメージ通りだ。ラストに滝沢修扮する作者と版元が登場するが、これは原作にあったかどうか記憶にないが、なんとなく分りやすい オチが付いた感じで、ちょっと蛇足の感。映画化の段階でくっついた部分かもしれない。
  【◎△×】7

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