HOME雑感LISTシネマTOP




【 映画雑感 】No.52

モーターサイクル・ダイアリーズ


2003年  イギリス/アメリカ  127分
監督 ウォルター・サレス
出演
ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ
ミア・マエストロ、メルセデス・モラーン

  ストーリー
 キューバ革命の指導者チェ・ゲバラが66年ボリビアで捕らえられ、39歳で銃殺されて、40年近い歳月がたつ。しかし、いまだに 世界各地で人気の高い彼の、青春時代の目覚めの旅を描く。
 1952年、喘息持ちの23歳の医学生エルネスト・ゲバラ(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、7歳年上の友人アルベルト・ グラナード(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)と、おんぼろバイクでブエノスアイレスを出発する。アンデスを越え、海岸線をチリ、 ペルーと抜けてベネズエラに至る1万キロに及ぶ南米大陸横断の旅だ。
 所持金は乏しく、2人の財産といえば故障ばかりしている年代物のバイクだけ。交代で運転し、行く先々でさまざまな人々と出会い、 困難を極めた貧乏旅行が続く。
 やがてバイクが修理不能になるとヒッチハイクで旅を続け、2人は旅の目的の1つだったサン・パブロのハンセン病患者の療養施設に たどり着く。

  一口感想
 10年ほど前(95年)初めてポルトガルに行った時、コインブラ大学の構内建物の壁に、ゲバラのポスターがダーッと一面に張って あるのを見て驚いた記憶がある。
 私のゲバラについての知識といえば、キューバ革命の指導者だったことと、帽子をかぶったヒゲ面の有名な写真でなんとなく顔を 知っている、という程度だ。だから、彼の死から何十年もたった今も、若い人たちが彼の写真を掲げることがなんだか意外に思えた のだ。
 しかし本作を見て、いまだにゲバラが世界中の人々から愛される理由が、私なりにわかった気がした。

 映画は、彼エルネスト・ゲバラと年上の友人アルベルト・グラナードが、おんぼろバイク “ポデローサ号” でアルゼンチンを 出発するところから始まる。
 ただでさえヨタヨタして頼りないバイクに男2人が跨り、後ろにはこぼれ落ちんばかりの荷物を乗せている。危なかしいったらない。
 案の定、バイクはしょっちゅう横転し、荷物はそのたびに大店開きの状態だ。
 内気でまじめなエルネスト、口八丁手八丁でお調子者のアルベルト。2人の凸凹コンビは喧嘩をしたり仲直りをしたり、時には女の 子にちょっかいを出したりしながら、若さいっぱいの楽しい旅を続けていく。

 これだけなら、これはよくある青春ロード・ムービーだ。しかし、2人にはじつはとても大切な旅の目的があったのである、ハンセン 病患者の療養施設を訪ねるという・・・。ただの浮かれた若者でない顔を、2人は徐々に見せ始める。
 ある町では死期を迎えた老女を癒す手立てがなく、エルネストは無力感に打ちのめされる。
 さらに、壊れたバイクを捨てて砂漠を徒歩で渡っていく時に出会ったインディオの夫婦は、若い2人に大きな感銘を残す。彼らは 共産党員という政治信条を曲げないために土地を奪われ、鉱山で働くためにやってきたのだ。
 マチュピチュの遺跡では、エルネストはインディオ文明の偉大さに打たれる。こうして彼の中で次第に革命思想の萌芽が育っていく 様子が、ごく自然に描き出される。

 2人はサン・パブロに着くと、そこのハンセン病療養所で働きだす。ここは尼僧たちが差別的な規則で患者を管理しており、医師たち もトラブルを避けるためそれに従っている。しかしエルネストは患者側に立ち、自分の意志で行動する。
 とくに私にとって印象的だったのは、大きな河をはさんで患者コロニーと医師たちのいる宿舎が分けられているのを、エルネストが 「隔離だ」と批判するところだ。

 彼は24歳の誕生日を祝ってくれる尼僧や病院スタッフたちのパーティを抜け出し、喘息持ちの身で、夜の河を泳いで対岸の患者 コロニーに向う。明るく賑やかなさざめきが聞こえる宿舎と対照的に、対岸のコロニーは暗くひっそりとしている。彼はそこで 患者たちと祝いたいと思ったのだ。
 気づいた患者たちが徐々に川岸に集まり、泳ぐエルネストを応援する。
 差別を嫌い、弱者に目を向ける革命者としてのゲバラの最初の姿が、ここに現われている。
 ゲバラは映画の最後で、「旅が自分を変えた」と日記に記す。若い柔軟な心が旅からいかに多くのものを吸収したか・・・、瑞々しい 感性に溢れた作品だ。
  【◎△×】7

▲「上に戻る」