| 【 映画雑感 】No.51 |
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ストーリー 西部史上に名高いアープ兄弟とクラントン一家のOK牧場での対決を題材とした、ジョン・フォード監督の西部劇。アクション中心 だった西部劇に日常生や叙情性を加えて、『駅馬車』と並んで高く評価されている。 1882年、兄弟とともにカリフォルニアまで牛を売りに出かけたワイアット・アープ(ヘンリー・フォンダ)は、アリゾナの トゥームストン近くで末弟を殺され、牛を盗まれてしまう。 かつてダッジシティの保安官だったワイアットは、犯人を捜すため、保安官となってトゥームストンに留まることにする。町で 元医者の賭博師ドク・ホリデイ(ヴィクター・マチュア)と知り合い、意気投合する一方、ワイアットはドクを追ってやって来た クレメンタイン(キャシー・ダウンズ)という美しい女性に惹かれる。 やがて、ドクの愛人チワワ(リンダ・ダーネル)の持っていたペンダントから、牛泥棒と弟殺しはクラントン一家の仕業と判明し、 ワープ兄弟とドク・ホリデイはOK牧場で彼らと壮烈な銃撃戦を展開する。 『荒野の決闘』という邦題とはずいぶん趣きが違う映画だった。“007シリーズ” の1、2作が『殺しの番号』 『危機一発』から 後に原題の『ドクター・ノオ』や『ロシアより愛をこめて』にもどったように、本作も原題の『愛しのクレメンタイン』にもどらない ものだろうか。そう願ってしまうほど、叙情的な美しさに満ちている。 “殺された弟の復讐” がテーマで、OK牧場の対決がクライマックス。だけど単なるガン・アクションではない。それが あまり西部劇を見ない私には意外でもあり、嬉しい驚きでもあった。 教会の野外パーティでクレメンタインにダンスを申し込むアープ。ためらった末のぎこちなさがとても新鮮だ。町民は「保安官と レディのために」と中央を空ける。長い脚を折り曲げて踊るアープ(ヘンリー・フォンダがじつにはまり役!)。彼の嬉し恥ずかし 気分が見ていてなんとも楽しい。 そういえば、散髪したアープに床屋が後ろから香水をひょいひょいと振りかけるシーンも楽しい。兄弟やクレメンタインと 並んでポーチに立っていると、通りかかった町民に「いい天気。花の香りまでする」と言われる。そのたび照れくさそうに「私だ」と アープは言う。慌てて「床屋が・・・」が付け加える。そんなしぐさが初々しくて、微笑ましい。 アープがポーチの椅子に腰を下ろし、後ろに傾けて揺り椅子のように揺らしながら、柱に乗せた脚でバランスを取るシーンも印象に 残る。
意外なのは、ドク・ホリデイが手術をする場面が出てくることだ。酒場のテーブルを並べただけの台の上で、クラントン一家の末弟に撃たれた愛人・チワワの銃弾の摘出手術をする。それまで酒浸りの賭博師に過ぎなかったドクが、たしかに元医者だった面影を覗かせるのだ。 手術後、酒場の親父が「よくやった」「見直した」というように何度も彼に頷きかける。言葉にしない心の行き交い・・・。私の好きなシーンの1つだ。 この時のドクとチワワの無言のやり取りを見て、クレメンタインは、もはや自分の入り込む余地はないことを悟る。そして結局 チワワが死んでしまったことで、ドクはクラントン一家の対決にアープたちと一緒に乗り込む決心をする。 さり気なく始まる短いシーン。だけど、あとに続くとても大事な意味を持っている。 ドクのことでもう1つ印象に残るのは、旅役者が酒場でシェイクスピアを吟詠するのを聞き入る場面が出てくることだ。老役者が科白を忘れて しまうと、引き取って続きを吟詠する。 身を持ち崩した彼の北部ボストンでの生い立ちが垣間見え、ちょっと切ない気持ちになる。 クラントン一家を倒したあと、元の牛追いに戻ったアープと、トゥームストンに残ることにしたクレメンタインの別れの場面が 素晴らしい。アープは慎み深く「私はクレメンタインという名前が好きです」という。これが彼の精一杯の愛の告白だ。 でも彼は、ドクを失ったばかりの彼女にそれ以上の接近はしない。これからアープは時々町に立ち寄り、クレメンタインとゆっくり 愛を育てていくのだろう。 馬を駆って走り去っていくアープ。彼の後ろ姿が心なしか弾んで見える。とっても素敵なラストシーンだ。 【◎○△×】8 |