| 【 映画雑感 】No.6 |
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ストーリー この街で育ち、報道写真家を志すブスカベ(アレシャンドレ・ロドリゲス)の眼を通して描かれた、ドキュメンタリー・タッチの犯罪ドラマ。
1960年代後半、ブラジル・リオデジャネイロの貧民街 “シティ・オブ・ゴッド” では、<優しき3人組>と呼ばれる少年
ギャングが幅を利かせていた。しかし、モーテル襲撃事件を機に3人は姿を消す。70年代、モーテル事件のきっかけを作ったリトル・ダイスが成長し、一流の悪党リトル・ゼ(レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ) となって舞い戻ってくる。彼は親友ベネ(フィリピ・ハーゲンセン)とともに銃と暴力で街を支配し、割に合わない「強盗」から「麻薬」 に商売替えして勢力を拡大する。 70年代後半、敵対するギャング、セヌーラ(マテウス・ナッチェルガリ)との抗争が先鋭化し、両者の間で血の抗争が勃発 する・・・。 何となくコワイ気がしてためらっていたけど、上映期間がいよいよ終わる間際になって、やっと見にいった。こんなに面白い映画だった のかとびっくり。でも実話を基にしているという中身は、予想
以上に衝撃的だ。“神の街” という皮肉な名を持つリオデジャネイロのスラム街が舞台。映画は大きく3つのパートに分かれ、それぞれがさらに小さなエピソードを綴れ織のようにつないで描かれる。60年代は少年犯罪はまだチンピラの悪さに過ぎないが、70年代、後期70年代、と時を経るごとに組織化・凶悪化していく。 銃・暴力・麻薬が当然のように目の前に転がる日常。同じブラジル映画『セントラル・ステーション』(98)でも、臓器売買のために浮浪児を集める人間が登場してショックを受けたが、ブラジルの現状はこんなにも凄まじいのだろうか。 斬新で強烈なオープニングにまず驚かされる。肉切り包丁が砥石(といし)の上で翻り、シュッシュッと鋭い 音をたてて研(と)がれる。けたたましく騒ぐ鶏。陽気で猥雑な活気とともに、禍々しい空気も立ち込める。 逃げた鶏を追ってリトル・ゼが率いる少年ギャング “ガキ軍団” が走る。通りかかったブスカペに捕まえろと命令する。反対側には 警官隊。両手を広げて腰を屈め、緊張するブスカペ。 彼を捉えたままカメラはクルリと180度パンする。さらにクルリ、同じ姿勢の10年遡ったブスカ
ペに切り替わる。“アパートの物語” と題のついた一連のシーンも印象的だ。ストップ・モーションと前の住人たちが幽霊のように立ち動く姿が繰り返され、麻薬のディーラー、ネギーニュがここで商売するようになるまでが描かれる。 監督のメイレレスはCMプロデューサー出身だそうだが、その手腕がこのような場面で発揮されているのだろうか、見事なものだ。 ストーリーはカメラマン志望の少年ブスカペの目を通して語られる。父親はまじめな魚売りの行商人だが、兄は60年代のチンピラ・ グループ “優しき3人組” の1人だ。子分のリトル・ダイスの発案でモーテルを襲い、失敗したことでグループも解体する。3人は金は 奪うが殺人はしないのがモットーだったが、それをあっさり破るのがまだローティーンのリトル・ダイスだ。ブスカペの兄を殺したのも彼だ。 数年後にリトル・ゼとなって戻ってきた彼は、暴力と殺人でたちまち街を支配するようになる。 彼の悪魔的な残酷さは、シマで勝手な盗みを働いた “ガキ軍団” に刑罰を与える場面にもっともよく表われている。逃げ遅れた2人の 子供(見たところ7、8歳くらいか)に銃を向け、「手と足と
どっちが撃たれたいか」と聞く。恐怖でわーわー泣きながら1人が「手」と
答えると、わざと足指を撃ち、げたげたと笑うのだ。そして、子分の少年に「度胸を見せろ」と銃を渡し、好きなほうを射殺しろと命じる。散々ためらったすえに、彼は壁にもたれて放心しているほうの子供を撃ち殺すのだが、撃つ前と後とで眼が違う。怯えていたのが、今はロボットのような無感情。無惨な人格変化が起こったのだ。 以前から街を牛耳っていたセヌーラと全面戦争に突入し、2年にわたる殺し合いを繰り広げるリトル・ゼだが、その最後は呆気ない。銃を手に入れた “ガキ軍団” が彼を取り囲み、何のためらいもなく射殺してしまうのだ。 気に入らないヤツの名前を列挙して、「次はそいつを殺そう」と話しながら帰っていく子供たち。まだ幼く無邪気でさえある声が、かえって無自覚な残酷さを示していて恐ろしい。 リトル・ゼは死んだが、この街の歴史は繰り返されることを示すエンディング。ドキュメンタリーのようなリアルなタッチで “神の街” の実態をえぐり出した、きわめて衝撃的な映画だった。 【◎○△×】8 |