HOME雑感LISTシネマTOP




【 映画雑感 】No.6

シティ・オブ・ゴッド


2002年  ブラジル  130分
監督 フェルナンド・メイレレス
出演
アレシャンドレ・ロドリゲス、レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ
フィリピ・ハーゲンセン、マテウス・ナッチェルガリ

  ストーリー
 この街で育ち、報道写真家を志すブスカベ(アレシャンドレ・ロドリゲス)の眼を通して描かれた、ドキュメンタリー・タッチの犯罪 ドラマ。
 1960年代後半、ブラジル・リオデジャネイロの貧民街“シティ・オブ・ゴッド”では、<優しき3人組>と呼ばれる少年 ギャングが幅を利かせていた。しかし、モーテル襲撃事件を機に3人は姿を消す。70年代、モーテル事件のきっかけを作った幼い リトル・ダイスが成長し、一流の悪党リトル・ゼ(レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ)となって舞い戻ってくる。彼は親友ベネ(フィ リピ・ハーゲンセン)とともに銃と暴力で街を支配し、割に合わない「強盗」から「麻薬」に商売替えして勢力を拡大する。徐々に敵対 するギャング、セヌーラ(マテウス・ナッチェルガリ)との抗争が先鋭化してくる。70年代後半、両者の間でいよいよ血の抗争が 勃発するが、リトル・ゼには思いがけない結末が待っていた。

  ひと口感想
 何となくおっかない気がしてずっとためらっていたけど、上映期間がいよいよ終わるという間際になって、やっと見にいった。 そして、こんなに面白い映画だったのかとびっくり。といっても、実話を基にしているという中身は、予想以上に衝撃的だ。
 “神の街”という皮肉な名を持つリオデジャネイロのスラム街が舞台。60年代はチンピラの悪さに過ぎなかった少年犯罪が、 年代を経るごとに組織化・凶悪化していく。銃・暴力・麻薬が当然のように目の前に転がる日常。同じブラジル映画『セントラル・ ステーション』でも、映画の初めに臓器売買のために浮浪児を集める人間が登場してショックを受けたが、ブラジルの現状はこんな にも凄まじいのだろうか。

 肉切り包丁が砥石の上で翻り、シュッシュッと鋭い音をたてて研がれる。けたたましく騒ぐ鶏。陽気で猥雑な活気とともに、 禍々しい空気が立ち込める。逃げた鶏を追った主人公ブスカペが、リトル・ゼ率いる少年ギャング団と警察隊の間で立ち往生する。 腰を屈め、両手を広げ、緊張するブスカペ。彼を捉えたままカメラはクルリと180度パンする。それを幾度か繰り返すうちに、 同じ姿勢の10年遡ったブスカペに切り替わる。この斬新で強烈なオープニングにまず驚かされる。
   <アパートの物語>と題のついた一連のシーンも印象的だ。ストップ・モーションと、前の住人たちが幽霊のように立ち動く シーンが繰り返され、麻薬のディーラー、ネギーニュがここで商売するようになるまでが描かれる。監督のメイレレスはCM プロデューサー出身だそうだが、その手腕がこのような場面で発揮されているのだろうか、見事なものだ。

 悪魔的な残酷さを見せるリトル・ゼだが、最後は呆気ない。銃を手に入れたガキ軍団が、何の恐れもためらいもなく彼を射殺し、 そして、気に入らないヤツの名前を列挙しては「次はそいつを殺そう」と話しながら帰っていく。まだ幼く無邪気でさえある声が、 かえって彼らの無自覚な残酷さを示していて、恐ろしい。このシーンは、リトル・ゼは死んだがこの街の歴史は繰り返されることを 示していて、じつに効果的なエンディングだ。ドキュメンタリーのようなリアルなタッチで“神の街”の実態を抉り出した、きわめて 衝撃的な映画だった。
  【◎△×】8

▲「上に戻る」