| 【 映画雑感 】No.2 |
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ストーリー リメイク権を巡ってハリウッドで争奪戦が繰り広げられ、史上最高額でワーナー・ブラザースが権
利を獲得したという、香港暗黒社会を舞台にしたサスペンス・ドラマ。マフィアの組員ラウ(アンディ・ラウ)はボスの命令で警察学校に入学、卒業して香港警察の一員となる。ボスのサム(エリック・ ツァン)が流す情報を使って敵対組織のマフィアを叩き、10年後の今は内部調査課の課長に昇進していた。サムもまた、ラウのお蔭で マフィアの最大勢力にのし上がっていた。 一方、ラウと同期の警察学校生ヤン(トニー・レオン)は、上司のウォン警視(アンソニー・ウォン)の命令で学校を中退してマフィア に潜入、今ではサムに信頼されて麻薬取引を任されるまでになっている。 ある夜、ヤンからウォン警視のもとに大きな麻薬取引の情報がもたらされる。水面下で捜査が始まるが、この動きはラウを通じてサムに 伝わり、捜査も麻薬の取引もどちらも失敗に終る。 こうして、双方に内部通報者がいることが明らかになる・・・。 マフィア組織に捜査官が潜入する映画は『フェイク』などこれまでもあったが、マフィアからもスパイを警察組織内部に送り込むという 設定にあっといわされた。アメリカがリメークを狙っているそうだ。「しまった、この手があったか!」と思ったんじゃなかろうか。(*) 相手の組織に潜り込んで10年もの時をかけてじっくりとその一員になりすます。現実にこんなことをやられたらもう手も足もでない なぁ、とちょっと空恐ろしい気もする。 昔、日本でも “草” と呼ばれる忍びは、妻を娶(めと)り子をなし、その土地にすっかり根を下ろした生活を 装いつつ、スパイ活動を行っていた。もちろん妻子は、夫が父が “草” とは知らない。彼は一旦ことあれば、一切の事情を伝えることも なく突然姿を消さなければならない。 家族に対してさえ真の愛情を持つことを許されない、過酷で非人間的な存在、それが “草” だ。本作の潜入スパイは、この “草” を 彷彿させるものがあると思った。 冒頭、マフィアの麻薬取り引きとその情報を得た警察の駆け引きがすごくスリリングだ。マフィアに潜入した警官ヤンは、ボスと同じ 車に同乗し、取り引き現場や時間を逐一上司のウォン警視に連絡する。方法は無線を指で叩いてモールス信号で送るのだ。指が絶えず 動き、細かなリズムを刻む。バレやしないかとドキドキしてくる。 一方、捜査司令部では、警察に潜入したマフィアの組員ラウが情報が漏れているのをいち早く察知し、家族への連絡を装ってボスの サムに連絡する。こうして双方が、自組織内部に相手方への内通者がいることを知るのだが、速いテンポで進行するこの導入は見事という ほかない。
ヤン、ラウ、それぞれが自組織内の潜入スパイを探り出す役を命じられるのがスリルを高める。自分の正体を自分で暴く、こんなむごい 役目ってあるだろうか。しかも相手方スパイをもみつけ出さなければならないのだ。 そしてウォン警視の非業の死。残された携帯からラウのほうが先にヤンの正体を知り、ついでヤンがラウの正体を知る。(きっかけが、 角封筒を腰に叩きながら歩み去るラウの後ろ姿をヤンが思い出すことなのだが、ラウのシルエットだけの映像がじつにスタイリッシュ。) そうと知ったラウは、警察コンピューター内のヤンのデータを消去してしまう。ウォン警視もいない今、警察官としてのヤンの身分を 証明するものはもはや存在しない・・・。隅から隅まで計算され、本当によく練られた脚本だと思う。 ヤンは10年の潜入生活に疲れきって、足を洗いたいと思う。ラウの方は順調に出世して、このまま警官でいっちゃおうと密かに思う。 スパイの足を洗いたい点は似てるが、その対比が面白い。
ヤンに扮するトニー・レオンのやつれた顔ってほんとに色っぽい。けど、でも修羅場に入った時、眼の光がぐんと鋭くなるのはさすがだ。ラウを演じるアンディ・ラウの尖った精悍な顔もいい。携帯の呼び出し音が無機質に響く地下駐車場で、足だけすっと現われる かっこよさに痺れた。 上司のウォン警視を演じたアンソニー・ウォンの情理備えた渋さ。とくにマフィアのボス役のエリック・ツァンは、マギー・チャンと 競演した『ラヴソング』では丸い背中に何ともいえない哀愁を漂わせていたが、本作では一転して愛嬌のある顔の底に不気味な怖さを 覗かせる。凄い俳優だと思う。 ヤンとラウが対決する屋上がクライマックスかと思っていたら、ここに第3の男が現われたのには本当に驚いた。さらにエレベーターの 銃撃、ドアが何度も何度も開閉する無常感。最後まで一分の隙もない造りに、映画の面白さを堪能した。
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