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【映画メモ】  で始まる映画



スカーフェイス

1983年  アメリカ  170分
監督 ブライアン・デ・パルマ
出演
アル・パチーノ、スティーヴン・バウアー、ミシェル・ファイファー
ロバート・ロジア、メアリー・エリザベス・マストラントニオ

  ストーリー
 ハワード・ホークス監督の名作『暗黒街の顔役』(32)を1980年代に置き換えたリメーク。
 80年、キューバからマイアミに不法入国した “スカーフェイス” と呼ばれるトニー(アル・パチーノ)は、弟分のマニー(スティ ーヴン・バウアー)とともにコカイン密売組織の手下となる。やがてボスのフランク(ロバート・ロジア)を殺害し、彼の愛人エル ヴィラ(ミシェル・ファイファー)を手に入れ、顔役にのし上がる。
 しかし、ボリビアの麻薬王から依頼された暗殺の仕事に失敗し、妹ジーナ(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)を弄んだと 勘違いして、長年の相棒マニーを射殺してしまう。

  一口感想
 凄まじい映画を見てしまった。‘面白い’ ではなく、やっぱり ‘凄まじい’ のほうが近い。それには「怖い」という気分も込められ ている。
 トニーが本格的にギャング稼業を始める最初の仕事、あるモーテルでのコカインの取り引きで、まずガツンとショックを受けた。相手 は、トニーの護衛役として一緒に来た弟分の若いヤクザを拷 問しながら、トニーに金のありか白状しろと迫る。はっきり画面に映るわけではないけれど、弟分がされていることを想像するだけで、 失神しそうになる。
 しかし、凄惨な光景を目の当たりにしながらも、トニーは口を割らない。べつにボスに忠義立てをしているわけではない。白状しても 結局は同じだと分かっているからだ。第一、この期に及んでもトニーはまだ生き延びるつもりなのだ。
 映画というのを忘れて、ぎらぎら光芒を放つトニーの気迫と野心に圧倒される。

 次第にトニーの顔が売れ、自分の地位が脅かされるのを感じたボスのフランクは、ある夜、殺し屋を使ってトニーを襲撃させる。この 時の駆け引きが面白い。トニーはもちろん一番にフランクを疑うけれど、一抹、確信が持てないところもある。そこで罠を仕掛ける。 手下に「きっかり3時にボスに電話して ‘失敗した’ とだけ言え」と命じてから、フランクのもとに赴くのだ。

 3時丁度に鳴った電話に、フランクは「これから帰る」と答えて、「女房だった」と言う。これで、自 分を襲撃した男たちの黒幕がフランクであることをトニーははっきり知るわけだが、彼にしたら裏切られたというよりも、渡りに船だったんじゃないかと思う。いずれはフランクを始末するつもりでいたのだから。
 アル・パチーノが暗黒街でのし上がっていく男の冷酷非情を、息苦しいほどの存在感で演じている。

 頂点を極めると、人は守りに入り、かつての輝きを失う。これはどんな世界でも同じではないかと思う。トニーもその陥穽に落ち込む。 猜疑心が膨らみ、冷静な判断力を失い、その上、コカインに溺れて、ボロボロになっていく。
 彼の凋落は突然にやって来る。長く盟友関係を結んでいたボリヴィアの麻薬王ソーサから、裁判の証人の暗殺を依頼されるのだが、ふと した気の迷いからチャンスを逸してしまうのだ。
 それを知ったソーサは、その夜の内に、多数の殺し屋集団をトニーの邸に送り込む。その素早さ、判断の狂いのなさ、容赦のなさ ・・・。真の悪党とはソーサのことを言うのだろう。

 ラストの衝撃的な銃撃戦、全身蜂の巣になったトニーの無惨な死、キューバから移民してきた若者の暗黒街での栄光と自滅までを描いた 壮絶な一代記は、やっぱり ‘凄まじい’ という言葉しか思い浮かばない。2時間50分の長尺を一気に見せてしまうデ・パルマ監督の 手腕に感服した。
  【◎△×】8

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助太刀屋助六

2001年  日本  88分
監督 岡本 喜八
出演
真田 広之、鈴木 京香、村田 雄浩、岸田 今日子、小林 桂樹
仲代 達矢、岸部 一徳、山本 奈々、鶴見 辰吾、風間 トオル

  ストーリー
 ふとしたことから仇討ちに巻き込まれ、助太刀が成功したことに味をしめた助六(真田 広之)は助太刀家業を思いつく。
 以来7年、各地を流れ歩いて、他人の仇討ちに首を突っ込んではお礼を頂く生活をしていたが、多少の蓄えも出来、亡き母の墓を 建替えようと故郷に舞い戻る。
 ところが、まさにそこでは仇討ちが行われようとしており、あっさり斬られて死んだ老侍(仲代 達矢)は助六の顔も知らない実の 父親だった。棺桶屋の爺さん(小林 桂樹)の話で初めてそれを知った助六は、親の仇を討つためにじっくり作戦を練ることにする。

  一口感想
 父親の名前は知らない。たった1人の母親も7年前に亡くなった。助六は天涯孤独の身の上だが、演じる真田広之の跳ねるような 足取り、敵討ちと聞くとむやみに張り切るおっちょこちょいぶりなど、全編に漲るのは能天気な明るさとパワーだ。

 放浪暮らしで溜め込んだ金で母親に少しはましな墓を作ってやろうと、助六は久しぶりに故郷に舞い戻る。墓代わりの石の周りの草を 取り、「2、3人入れるような大きいのを作ってやるぜ」と話 しかける。
 全体にバタバタした調子で話が進み、落ち着きどころがないのが難点だが、時々出てくるこんなシーンで、おっかさんは男に捨てられた あと、懸命に助六を育てて、苦労して、いいことは1つもなくて死んじゃったんだな、でも助六はちゃんとそれが分ってるんだ、なんて しんみりさせる。
 面白いのは、「どうせ碌な男じゃない」はずの父親が、ワケありのきっちりした侍だったこと。助六の母親の墓に詣でて、黄色い小菊を 一輪供えたりして、泣かせます。

 実父が殺されたのを知った助六は、今度は助太刀ではなく、自分のための敵討ちに乗り出す。後半は、屋根に上がったり棺桶に隠れたり 菰の下にもぐったり、と軽業師みたいな大立ち回り。真田広之の本領発揮、いかにも楽しげに演じている。
 岸田今日子と鈴木京香のとぼけたやり取りや、仲代達矢の仇を討たれて死ぬ侍にしてはのんびり悠長なところ、小林桂樹の棺桶屋が なにかあるたびにトンカチで自分の指を叩くところなど、ユーモラスな場面も満載だ。
 “南無妙・法蓮・華経”が3拍子とは気づかなかったなぁ。岸田今日子がぼろぼろ涙をこぼしながら、三角形に手を振って村人を 指揮するのは笑いが止まらなかった。鈴木京香 “おぼこ” はちょっと苦しいかも。でも、棺桶にぴょんと飛び込んだり駄馬に 乗ったり、田舎娘らしかったと思う。
  【◎△×】6

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スタア誕生

1954年  アメリカ  154分
監督 ジョージ・キューカー
出演
ジュディ・ガーランド、ジェームズ・メイソン、ジャック・カーソン
チャールズ・ビックフォード、 トミー・ヌーナン

  ストーリー
 コーラス・ガールのエスター(ジュディ・ガーランド)は、チャリティ・ショーの晩に出会ったハリウッドの大スター、ノーマン・ メイン(ジェームズ・メイソン)に素質を見いだされ、映画オーディションのチャンスをつかむ。降板した主演女優の代役として出演 したミュージカルは大成功し、エスターは一躍有名になる。
 ノーマンとの間にいつしか愛が芽生え、2人は結婚するが、成功への階段を着実に上るエスターと対照的に、人気が下降線をたどる ノーマンは、酒に溺れる日々を過ごすのだった。
 ジョージ・キューカー監督の『栄光のハリウッド』(32)を、監督自身が再映画化したハリウッドの栄光と挫折の物語。ジュディ・ ガーランドは本作で見事にスクリーン・カムバックを果たした。

  一口感想
 『スタア誕生』というタイトルや、名場面集などでよく紹介されるガーランドが「スワニー」を歌うシーンなどから、下積み女優が 苦労の末に栄光をつかむシンプルなサクセス・ストーリーとばかり思っていたが、中身は意外にシビアなものだった。
 エスターは順調にキャリアを延ばしていくが、彼女の成功の足がかりを作ってくれた夫ノーマン は、対照的に、スターの地位を転がり落ちていく。
 人気スターが麻薬や酒に溺れる例は、マイケル・ダグラス、ゲイリー・オールドマン、エリザベス・テイラー、ドリュー・バリモア、 リヴァー・フェニックスなどなど、枚挙にいとまがない。その後立ち直ったスターもいれば悲劇的な最期を遂げたスターもいる。
 本作では、夫ノーマンのアルコール中毒は、泥酔して人前で失態を演じる程度の描かれ方しかしていないが、たくさんの例を目の当たり にしている映画ファンにとっては、これで十分だと言える。

 実人生のガーランドは、むしろ夫ノーマンに近い人生だったらしい。彼女がMGMミュージカルの看板スターだった当時、量産体制の ハリウッドでは昼夜を分かたぬ撮影が行われ、現場でのテンションを維持するために医師は彼女に興奮剤を投与し、撮影が終われば睡眠 剤を与える。その繰り返しで精神不安定になったガーランドは、撮影に穴を開けるようになり、それが原因でMGMを解雇され、本作は 再起をかけての出演だったというのだ。

 すさまじい話だが、映画のなかのガーランドはそんな経歴を少しも感じさせない。美人ではないが、小柄で目がくっきりした童顔は、 強いインパクトを見る人に与える。なにより、その歌唱力に圧倒される。声の深みやつやが並みの歌手とは違うのだ。
 ドサ回り歌手だったエスターが、仕事が終わった後、片付けられた店内で歌う場面の素晴らしさといったら! 仕事の解放感を味わう ように、バンド仲間がゆったり演奏を始める。うながされてエスターが歌う。自分たちのためだけの演奏、そして歌。音楽そのものを 楽しむ至福の“とき”。
 私は楽器も歌もできないが、音楽の恍惚感がこんな時は、ほんの少しだけど分かったような気持ちになる。

 ♪アイダホ州、ポカテロの町。劇場のトランクの中で私は生まれた♪と歌う15分にも及ぶメドレー・シーン、撮影中の場面を自宅の 居間で夫ノーマンに再現してみせるシーン、どれも生き生きした楽しさにあふれている。歌も踊りもガーランド1人、それでこれだけの 長丁場を見せてしまうのだ。彼女の卓越した才能を思わないでおれない。
 映画はエスターとノーマンの悲しい夫婦愛がほどよいスパイスとなって、ラストの感動につながっていく。2時間半が少しも長いと 感じなかった。
  【◎△×】7

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素晴らしき日曜日

1947年  日本  108分
監督 黒澤 明
出演
沼崎 勲、中北 千枝子、渡辺 篤、中村 是好
菅井 一郎、小林 十九二

  ストーリー
 終戦直後の風俗を背景に、貧しい一組の恋人が過ごすある日曜の一日を映し出した作品。デヴィッド・W・グリフィス監督の『恋と 馬鈴薯』をベースに、黒澤明監督が当時無名の2人を主役に、隠し撮りを多用して詩情あふれる作品に仕上げた。
 ある日曜日、雄造(沼崎 勲)と昌子(中北 千枝子)は楽しいデートを計画するが、持ち金は2人で35円しかなく、交響曲コンサート の安い切符もダフ屋に買い占められたりと、次々に厳しい現実に直面する。惨めな気持ちになった2人は、ひとけのない野外音楽堂に たどり着く。聞き損なったコンサートを始めようと雄造は舞台に立ち、昌子は懸命に励ましの拍手を送る・・・。

  一口感想
 1947年の製作というと戦後わずか2年、それにしては人々の服装や街並みがこざっぱりしてるなぁ、というのが正直な感想。すごい 勢いで復興してたんだろうか。クラシックの演奏会にあんなに人が行列するのも意外だった。文化に飢えてたのかなぁ、それとも本作は 黒澤監督が外国映画に触発されて作ったということなので、その関係かな・・・?
 かと思うと、突然浮浪児が出てきて、あ、やっぱりまだこういう時代なのよね、と思ったりもする。主人公の雄造が、身なりはちゃんと した勤め人なのに路上のシケモクを拾ったり、戦後の復興と貧窮がごた混ぜの時代相がよく出ているような気がする。

 私の子ども時代、あちこちにあった “広場” も、映画の中にしっかり健在だ。男の子が野球をしている。自転車や車や、時には馬車も 横切る。そのたびに野球は中断。子どもたちのあか抜けないセーター姿もあの当時の悪がきそのもの。戦後すぐの様子がうかがえて、懐旧 の情を覚える。

 後に名バイプレイヤーとして活躍した中北千枝子の珍しい主演映画。ずんぐりしてちっとも美人じゃないけど、話が進むうちに昌子が どんどん可愛く見えてくる。人柄の良さのせいだろう。グズグズいじけてばかりいる雄造を明るく励まし、デートを楽しくしようとする 様子が健気だ。
 雄造は戦争帰りらしい。終戦直後の男性は敗戦のショックで自信喪失、大方こんな風だったんじゃなかろうか。銃後を守った女性のほう がしっかりしていたかもしれない。

 動物園までは晴れていた空が、演奏会の辺りから崩れだして、あとは土砂降り。35円(今なら幾らぐらいに相当するんだろう)という わずかな所持金では、2人の弾んだ気持ちも惨めになる一方だ。恋人たちの微妙な気持ちのズレや、修正しようとするいじらしさに、つい つい微笑が湧いてくる。

 終盤、上野の野外音楽堂のシーンの試み(雄造が幻のコンサート・マスターになり、昌子が映画の観客にカメラ目線で拍手を求める) は、海外の評価に反して日本では失敗だったらしい。う〜ん、シャイな日本人にはこういう演出はやっぱり向いてない気がするな・・・。
 むしろ、駅で電車に乗った昌子にいつまでも手を振る雄造の晴れやかな顔のほうが印象が強い。(昌子を画面に映さないところがいい。 見なくても、彼女の様子はもう十分想像できる。)
雄造が、ホームに落ちていたシケモクをじっと見はするけれど、手を出さない ラストもいい閉めかただった。
  【◎△×】7

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スピード

1994年  アメリカ  115分
監督 ヤン・デ・ボン
出演
キアヌ・リーヴス、デニス・ホッパー、サンドラ・ブロック
ジョー・モートン、ジェフ・ダニエルズ

  ストーリー
 爆弾を抱えて猛スピードで疾走するバスをメインに、乗客を救うために活躍するロサンゼルス市警特別隊員と爆弾魔との攻防を描いた ノンストップ・アクション。
 ラッシュアワーのロサンゼルス市内を走る通勤バスに爆弾が仕掛けられる。それは時速が50マイル(80キロ)以下になると爆発 する仕組みになっており、爆弾魔のハワード(デニス・ホッパー)から身代金が要求される。ロサンゼルス市警特別隊員ジャック(キア ヌ・リーヴス)は、疾走するバスに飛び乗り、命がけの乗客救出作業を開始する。
 重傷を負った運転手の代わりにハンドルを握るのはアニー(サンドラ・ブロック)。次々に起こるトラブルに、必死の努力を続ける ジャックたちだが…。

  一口感想
 公開時はバスと地下鉄の迫力がすご過ぎて、エレベーターのことは忘れてしまっていたが、あらためて見ると、エレベーターも 相当に凄い。つまり全編通して「これでもか」の勢いなのだ。観客を楽しませようという徹底したサービス精神に満ちている。
 “エレベーター” は、クレーンががむしゃらにビルを壊して突っ込んでいくところが肝が冷えた。クレーンでエレベーターを支える なんて土台無理よ〜、なんて考えている暇はない。テンポのよさに テンションが一気にあがる。見事な導入だ。

 “バス” に舞台が移ってからは、もう「どうすんのよ」「この先どうすんのよ」と心の中で言いっ放し。気がつくと足をカタカタ 言わせている。
 スピードが80キロ以下になったら仕掛けられた爆弾が爆発するのだから、町なかを走る時は気が気でない。渋滞に巻き込まれたら 大変だ。
 ジャックの上司が伴走車から地図を片手に行く先を指示する。ところが、地図と現実の道路事情が必ずしも一致していなかった りする。いかにもありそうなことだけに、ハラハラ度は増すばかり。まだ完成していない高速道路を15mもバスがジャンプする場面は、 思わず目をつぶってしまった。じっさいの撮影は、着地がすんなり行き過ぎてやり直したというから、話は聞いてみないと分からない。

 キアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックの組み合わせがすこぶるいい。キアヌはそうとう身体造りをしたに違いない。二の腕が逞しく て、とても頼りがいがある。作戦のためにバスを離れる時なん て、自分まで乗客の1人になった気分で「ほんとにもどってくる?」と心細くなったものだ。
 サンドラのちょっとのほほんとした雰囲気もいい。神経がブチ切れそうな緊張の連続のなかで、ふっと気の抜けたことを言う。これに 救われる。本人はほんとは必死。涙こらえて、歯を食いしばって頑張ってるんだけど、天然ボケのキャラなのだ。
 恋なんてしている場合じゃない状況で、ジャックとアニーの間にほんわかした気分が生まれる。「異常な状況で結ばれた恋は長続き しない」「じゃ、試してみる?」、こんな台詞も気が効いている。

 犯人役のデニス・ホッパーは、『ブルーベルベット』(86)辺りからこういう悪役がよく似合うようになった。“地下鉄” では、知能 犯の彼がけっこう武闘派でもあることを証明して、憎々しいほどに強い。演出・脚本・俳優三拍子そろった快作。アクションものには 珍しく感動度が高く、8点献上。
  【◎△×】8

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スプラッシュ

1984年  アメリカ  109分
監督 ロン・ハワード
出演
トム・ハンクス、ダリル・ハンナ、ジョン・キャンディ
ユージン・レヴィ、ドディ・グッドマン

  ストーリー
 ニューヨークを舞台に、人魚伝説をもとにファンタジックな恋を描いたコメディ。
 ニューヨークの青果市場を経営しているアレン(トム・ハンクス)は、少年の頃、海で溺れそうになったところを人魚に助けられた ことがある。陽気で恋愛にも大胆な兄フレディ(ジョン・キャンディ)にくらべて、女性が苦手な彼は、ある時、誤って海に転落し、再び 人魚に助けられる。
 ある日、一風変わった美しい女性マディソン(ダリル・ハンナ)と知り合ったアレンは、彼女を人魚と知らないまま、一目惚れして 一緒に暮らし始めるが、正体を見破った海洋学者(ユージン・レヴィ)に追い回される羽目になる。

  一口感想
 ダリル・ハンナの人魚がえらく可愛い。世間に汚れていないピュアな感じ。こんな女性に出会ったら、そりゃ一目惚れするだろうなぁ。 分かる。まさか人魚と思わないアレンが、あまりの天衣無縫ぶりに「彼女は何者か・・・」と悩んじゃうのももっともなのだ。

 彼女がお風呂に入るシーンが最高。「え、お湯に? 大丈夫?」なんて思ってしまうけど、余計な心配みたい。よっこらしょ、と 尾びれを広げてバスタブに乗っける。つややかに光った尾びれがゆったり気分。「暢気だなぁ」と笑いがこみ上げてくる。そうそう、 海中で泳ぐ時も、ブロンドのカーリーヘアがゆらゆら海藻のように揺れて、すごく綺麗。
 アンデルセンの「人魚姫」がベースになっているらしいが、あっちは悲しいお話だけど、これはどこからどこまでキュートで楽しい。

 トム・ハンクスが細い! 兄貴のフレディの「お前は痩せてるから」という信じがたい科白まで出てくる。考えてみるともう20年 以上前の映画なんですね、これ。さり気ない演技に好感度大。
 主役以上の存在感なのが、兄フレディ役のジョン・キャンディ。女の子のスカートを覗くヘキは大人になっても変わらず。仕事は弟に 任せ放しのいい加減な兄貴だけど、やる時はやります。恋に悩む弟をしっかりサポートし、捕らえられた人魚の救出作戦でも大活躍。 身内の温かさが太った身体からばんばん放出される。

 海洋学者コーンブルースのエキセントリックさにも笑ってしまった。彼女はちゃんと二本の脚で歩いているのに、人魚だと信じて疑わない。バケツをぶらさげて後を追っかける。(水をかけると人魚にもどるってどうして知ってたんだろう?)上司に冷たくされるとたちまち宗旨替え。アレンの協力者になって、人魚が捕らえられた研究所への手引きをする。
 上司がちょっと憎たらしいけど、あとはみんないい人ばかりなのだ。

 人間と異界の者との恋は、(民話でも童話でも)悲しい別れと相場が決まっているし、それはそれで胸キュンのいい終わり方だと 思っていたけど、本作は意外なことにアレンのほうが人魚の世界に行ってしまう。2人が手をつないでひらひら泳ぎながら遠ざかっていく 様子はとてもロマンティック。ファンタジーの度合いがこれで3割かたアップしたような気がする。
  【◎△×】7

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スペシャリスト

1994年  アメリカ  110分
監督 ルイス・ロッサ
出演
シルヴェスター・スタローン、シャロン・ストーン
ジェームズ・ウッズ、ロッド・スタイガー、エリック・ロバーツ

  ストーリー
 フロリダ州マイアミ。かつてCIAの爆破工作員であったレイ(シルヴェスター・スタローン)は、今はフリーの爆破作業請負人をして いる。ある日、メイ(シャロン・ストーン)と名乗る謎の女から奇妙な依頼を受ける。マイアミを牛耳るキューバ系マフィアのドン、 レオン(ロッド・スタイガー)、組織の警備担当をしている元CIA工作員ネッド(ジェームズ・ウッズ)ら3人の男を爆破で殺して ほしいというのだ。レイは、自分は殺し屋ではないと一度は断るが、単独で調査を開始する。

  一口感想
 マフィアに両親を殺された女がマフィア・ファミリーに復讐を企てる話と、かつてCIA工作員だった男が自分の不正を告発した部下を 殺そうと目論む話が交錯しながら進んでいく。要にいるのがスタローン扮する爆破のスペシャリストのレイで、CIA工作員の部下だった 男だ。
 謎の女メイに扮しているのがシャロン・ストーン、元CIA工作員がジェームズ・ウッドで、マフィアのドンはロッド・スタイガー。 B級お気楽映画にしては脇役出演陣は豪華だ。

 ラブシーンでスタローンが全裸を披露している。筋肉隆々の重戦車みたいな肉体は見事。しかしそれ以上に、黙々とエクササイズに励む 場面の彼がいい。窓から差し込む光に浮き上がり、まるで動く彫刻みたいだ。ここにシャロン・ストーンのTバックがスリットスカート から覗くショットが交錯する。脚から腰にかけてがゾクッとするほどセクシー。滑らかな線の美しさはもちろんだ。
 2人のショットが交互に現われるだけなのに、なまじのセックスシーンよりよほどにエロティックだ。2人の肉体美をこんな形で 楽しめるとは思わなかった。

 爆破シーンが気前よく出てくる。ざっと数えても5,6回はあったんじゃないかな・・・。それぞれがけっこう見応えがある。爆破の スペシャリストだけあって、レイは狙った相手はぜったい逃さない。
 面白かったのは、地下駐車場の場面。相手も自分がターゲットなのは知っているから用心に用心を重ねる。ところがレイはそれも全部 読んで、さらに裏をかく。駐車場の料金表示機の「3、2、1・・・Bye、Bye」「ドカン」は痛快だった。
 もちろんラストにはぬかりなく大爆破シーンも用意されており、いいストレス解消になる。

 復讐って成功したからといって、本来そう気持ちいいものではないと思うんだけど、この映画はその辺は見事にドライ。「気分はどう」 とレイに聞かれて、メイは「最高」と答える。アッケラカンとして、かえって爽快感があった。
  【◎○×】5

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スライディング・ドア

1997年  アメリカ/イギリス  99分
監督 ピーター・ハウイット
出演
グウィネス・パルトロウ、ジョン・ハンナ、ジョン・リンチ
ジーン・トリプルホーン、ゼーラ・ターナー、ダグラス・マクフェラン

  ストーリー
 ドアが閉まろうとする電車に乗れた場合と乗れなかった場合、という2つの運命の行方を描く恋物語。
 PR会社をクビになって最悪の気分で地下鉄の階段を降りるヘレン(グウィネス・パルトロウ)。電車に乗れたヘレンは帰宅して、 同棲中のジェリー(ジョン・リンチ)が以前の恋人リディア(ジーン・トリプルホーン)とセックスしている現場を見てしまう。
 親友のアンナ(ゼーラ・ターナー)を相手にバーでやけ酒を飲んでいると、電車で隣り合わせたお喋りでキュートなジェームズ (ジョン・ハンナ)とまたも鉢合わせする。
 乗れなかったヘレンはひったくりに合い、おまけに怪我までしてしまう。お蔭でジェリーの浮気は目撃しないで済むが、挙動に不審を 抱く。そしてとりあえずバーガー屋で配達のアルバイトを働き始める。

  一口感想
 ほんの些細なズレが原因でその後の成りゆきが変わってしまうというストーリーは、ポーランド映画の『偶然』(82)やドイツ映画の 『ラン・ローラ・ラン』(98)によく似ている。ただ、この2作は分岐点となった出来ごとにそのつど時間を巻きもどして、違う経過を 追っていくのに対し、本作は同時進行で分かれた2つのストーリーが語られる。そこが目新しい感じがする。

 一方、『偶然』『ラン・ローラ・ラン』では分岐点から後の主人公の運命が大きく変わっていくのに 対し、本作は、同棲中の恋人ジェリーの浮気がヘレンにばれるかばれないか、に話の焦点が絞られる。浮気って遅かれ早かればれるもの だし、そういう意味では、主人公たちが結ばれるまでがちょっと変わっているけど、後はまーまーふつうのラブストーリーというところ か。

 浮気の現場を見てしまったほうのヘレンは、ジェリーと別れて新しい人生に乗り出していく。髪をばっさりカットして、見た目も大変 身。新しい恋にも出会う。恋人の裏切りに一時は落ち込むけれど、積極的に生きるチャーミングな女性だ。
 一方、浮気に気づかないほうのヘレンは、長い髪を三つ編みにして、バーガー屋の配達業。ジェリーの浮気相手のリディアにそうとは 知らずに苛められたりして、冴えない日々だ。
 こちらはもっぱらジェリーが、ヘレンにばれないうちにいかにしてリディアと別れるか、に汲々とする話が中心になる。ストーリーの 視点を変えたのはアイデアかもしれないが、ヘレンに生彩がないのが私としては少し寂しい。

 2人のへレンが同時に画面に登場するシーンがある。新しい恋人ジェームズが川でボートの練習をするのを、別のボートで応援する ヘレンと、その川沿いの道を親友アンナに悩みを打ち明けながら歩くヘレンだ。ちょっと考えると頭がこんがらがるけど、これはこれで とても面白い。
 2人のヘレンは結局同じ結論にたどり着くのだが、2人の時間がこんな風に時々同じ画面で交錯したら、ラストの印象ももうちょっと 違ったんじゃないかな、と思ったりする。悪くはないが、どことなく食い足りなさが残るのだ。
  【◎△×】6

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