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【映画メモ】  で始まる映画



マシニスト

2004年  スペイン/アメリカ  102分
監督 ブラッド・アンダーソン
出演
クリスチャン・ベール、ジェニファー・ジェイソン・リー
アイタナ・サンチェス=ギヨン、ジョン・シャリアン

  ストーリー
 機械工のトレバー(クリスチャン・ベール)は、1年にもわたる不眠症でげっそり痩せてしまった。集中力が落ち、周囲が心配する なかで、新入りの溶接工アイバン(ジョン・シャリアン)の奇妙な仕草に気を取られて、仲間に大怪我をさせる事故を起こしてしまう。 しかし、上司や同僚は「アイバンなどという男は存在しない」と言う。
 間もなく不可解な出来事が頻繁に起き始め、トレバー自身も危うく命を落としかける。強迫的な不安にかられたトレバーは、アイバンの 正体を突き止めようとするのだが・・・。
 主演のクリスチャン・ベールが役作りのために行った30キロ近いダイエットが話題となった。

  一口感想
 俳優が役作りのために痩せたり肥ったりするのはそう珍しいことではないが、本作のクリスチャン・ベールの痩せっぷりはすごい。
 フランス映画『ソン・フレール ー兄との約束ー』(03)のブルーノ・トデスキーニもそうとう痛々しかったが、それでも12キロの 減量だ。ふつう痩せるといってもだいたいこの辺りがいいところじゃな いかと思うが、クリスチャン・ベールはなんと約30キロ、これほどの減量は初めて聞いた。よく病気にならなかったものだと思う。

 トレバーが工場で働く機械工(machinist)だという設定がうまい。あまりの睡眠不足で集中力が散漫になっており、いつ 事故を起すかとハラハラさせるからだ。他の仕事、たとえばお役所でのデスクワークかなにかだったら、とてもこうはいかないだろう。
 立っているだけでもしんどそうで、時々ふっと眠気に誘われるサマはとても演技とは思えない。それでもほんの些細な刺激でたちまち 目が覚めてしまうのだ。彼の神経がむき出しになってひりひりしているのを感じさせる。
 視覚から来るアンバランスな感覚と心理的な不安感が重なって不協和音を奏でるのだ。

 そしてある日、ついに事故が起こる。アイバンという男がトレバーに付きまとうようになり、作業中の不審な仕草にトレバーが気を 取られたのが原因だ。彼の機械の操作ミスで、仲間が片腕切断の大怪我をしてしまう。
 このアイバン、スキンヘッドの大男で、意味不明の薄笑いを浮かべている。姿を見せるだけで薄気味悪い。その上、工場では1人と して、彼がここで働いているの見た者はいないのだ。さらに不可解なできごとが続発して、トレバーはだれがが自分を陥れようとして いるという強迫的な不安感を抱くようになる。

 アイバンの正体やトレバーの不眠の原因がサスペンス風に解き明かされていくのだが、謎解きそのものは「あー、そういうことだった か」という程度で、それほどの驚きはない。しかし、クリスチャン・ベールの異様な痩せ方が圧倒的なムードを作り上げ、1つ1つの 場面、エピソードに説得力を与えている。そういう意味ではちょっと珍しい映画だと思った。
  【◎△×】6

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魔女の宅急便

1989年  日本  112分
監督 宮崎 駿
出演(声)
高山 みなみ、佐久間 レイ、戸田 恵子、山口 勝平、加藤 治子

  ストーリー
 角野栄子の同名児童文学を原作にした、少女がさまざまな経験を積んで成長する姿を描いたファンタジー・アニメーション。
 13歳の駆け出し魔女・キキ(高山 みなみ)は、一人前の魔女となるため、黒猫のジジ(佐久間 レイ)と一緒に修業の旅に出る。 たどり着いたコリコの街で、キキは親切なパン屋の夫婦(戸田 恵子)の世話で、箒を使って宅急便の仕事を始める。
 画学生のウルスラ(高山 みなみ)や飛行クラブのメンバーのトンボ(山口 勝平)と知り合い、失敗を繰り返しながらも仕事に精出す が、ある日、魔法の力が弱まっているのに気づく。

  一口感想
 子どもの頃読んだ本に、12、3歳の少女が森の池に作られた小屋で一人暮らしを始めるところがあった。原っぱから草をどっさり 刈ってきて、乾かして、ベッドの代わりにし、夜は月の光を浴びながら、池に糸を垂らして魚を釣る。そんなことにワクワクした。 自立への漠然とした憧れだった のかもしれない。
 キキがパン屋の2階で暮らし始める時、「暮らすって物入りねぇ」といいながらフライパンを買ったり、それでホットケーキを焼い たり、大きなたわしで床をごしごしこすって磨いたり、そんな場面に子どもの頃を思い出し、やっぱりワクワクしてしまった。

 空を飛ぶ空想が大好きな私にしては、キキの飛行シーンは思ったほどの爽快感はない。多分、“箒にまたがる” というのが危なかしく 見えるせいだろう。クルッとバランス崩したらどうしよう、なんて思ってしまう。突風にも遭うし、土砂降りにも見舞われる。一人立ち するってほんとは大変なんだ、とさり気なく教えているようだ。

 画家の卵のウルスラは、自立した女性としてのキキのモデルというところか。彼女の住む森の家が素敵。キキが自信をなくした時の 「なにも考えず、がむしゃらにトライし続ける。それでダメだったら、パッと気持ちを切り替えて違うことをする」というアドバイス、 ありふれてるけど、やっぱりそこにいくのよね。彼女の体験から出ているだけあって、説得力がある。
 ほかにも、パン屋のおかみさん、老婦人、トンボ、・・・キキはほんとにいい出会いをしている。これってやっぱり彼女の “人間 力” なんだろうなぁ〜。

 黒猫のジジは、思春期前の子どもによくある “空想上の友達” と考えると分りやすい。『ショコラ』(00)では、主人公の幼い娘は カンガルーを友達にしていた。
 居もしない友達を居るといったり、お喋りしているのを見ると、大人は嘘をついていると勘違いするけど、この “空想上の友達” は、子どもが思春期に入ると姿を消す。
 キキがジジと会話できなくなるのは、彼女が少女期を抜けたことを意味しているのだろう。でも、それを悲しんでいる暇はない、目の 前には次々に新しい世界が開くのだから。人生の峠をとっくに通り越し、後ろを振り向いてばかりいる私には、そうしたキキがとても 眩しく見える。

 ヨーロッパの古い街並みがそのまま現われたようなコリコの佇まいが素晴らしい。海沿いの長い坂道、入り組んだ石畳の裏路、道路を おおうアーチ型の石の橋、パン屋の店のほっかりした匂い・・・、あー、こんな街に私も住んでみたい。
  【◎△×】7

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マン・オン・ザ・ムーン

1999年  アメリカ  119分
監督 ミロス・フォアマン
出演
ジム・キャリー、ダニー・デヴィート、コートニー・ラヴ
ポール・ジアマッティ

  ストーリー
 35歳で他界した実在のコメディアン、アンディ・カウフマンの生涯を描いた人間ドラマ。
 売れない芸人アンディ(ジム・キャリー)はライブハウスを転々としていたが、ある日チャンスが訪れる。有名なプロモーター、 ジョージ・シャピロ(ダニー・デヴィート)の目に留まったのだ。
 コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』を皮切りに、大ヒット番組『タクシー』で人気が爆発する。相棒ボブ・ズムダ(ポール・ ジアマッティ)と2人で生み出したキャラクター、トニー・クリフトンの暴走、客席の女性と本気で勝負する男女混合プロレス、と 過激な芸を続けるアンディ。しかし、彼の破滅的芸風は次第に大衆に受け入れられなくなっていく。
 恋人リン(コートニー・ラヴ)と結婚したアンディは、間もなくガンに冒されていることを知る。

  一口感想
 アンディ・カウフマンの芸風って、映画を見る限り相当に破壊的だ。客をバカにしてイライラさせて、自分に対する嫌悪や怒りを煽る ことで成り立っているように見える。日本でも客に毒舌を浴びせるのを芸風にしている芸人は多いけれど、客との距離を敏感に計算しつつ 悪態をついている。 客は「悪態を許す自分」という優越感をくすぐられるという構図。基本的には “幇間(ほう かん)” の伝統の上に成り立っていると思うけど、カウフマンはそういった芸人と客との関係すら破壊してしまうのだ。

 その上、ハプニングこそが身上と、ライブに固執するけれど、それがじつは綿密に計算されたヤラセ。マネージャーもスタッフも 「これはヤラセ」とニヤニヤしていると、さらにそれがひっくり返される。玉葱を剥いてるみたい。本当とフェイクの区別がつかない。
 その最たるものは本物のプロレスラーとの試合だろう。リング上で “脳天逆(さか)落とし” の技をかけ られて首の骨を折る大怪我を負う・・・。これがぜんぶ、相手レスラーもグルになったヤラセなのだ。

 これでよく人気が出たものだと思うけど、最後のところでは世間に拒否される。そうよねぇやっぱり・・・、私も彼の芸は全然分からな かった、と思いつつ、それでも芸風を変えないカウフマンに凄みを感じたしもして。
 真実 ‘めいた’ ものを徹底的に壊すことで、‘嘘’ のなかの 真実’ をつかみ出そうとしたのかな・・・。バーチャルと現実の境い 目を突破しようとしたのかな・・・。しかし皮肉なことに、彼がガンに侵されると、それさえもだれも簡単に信じようとしない。もっとも身近な家族でさえも。

 こうなるともう病気も喜劇に近くなる。最高の喜劇は、藁をもすがる思いで出かけたフィリピンで、“奇跡の民間療法” を受ける ところ。この治療はひと頃日本でもかなり話題になって、私もテレビ特番を見たことがある。一目でかなり胡散くさかった。カウフマンが これを信じたのは不思議だけど、フェイクと真実の亀裂にふい〜っと落ち込んでしまったのかしら・・・。
 イカサマと気づいた時の苦笑い。そのままデスマスクに移行する流れは、巧みな演出と感心した。

 カウフマンが生前に作った「お別れ」のビデオを葬式で上映するシーンは、ジム・キャリーのキャラクターもあってとても温かい。
 トニー・クリフトンという別人格が彼の芸にどういう意味があったのかよく分からなかったけど、マネージャーのシャピロや構成作家 ズムダ、恋人リンなど、彼をめぐる人々が最後まで彼を見守り続けたのは、カウフマンの才能を本当に理解していたからでしょう。それが この映画の不思議なぬくもりになっていると思った。
  【◎△×】7

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