| 【 じっくり映画館 】No.31 |
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ストーリー ダコタの大自然の中で、ネイティブ・アメリカンの世界に同化していく北軍中尉の姿を描いている。アカデミー賞では作品賞を初め、 監督、脚本賞など、7部門に耀いた。 本バージョンは、ダンバーが着任する以前のセジウィック砦が騎兵隊員らによって放棄される様子など追加され、通常版より52分 長い233分になっている。 1863年、南北戦争の激戦で負傷した北軍のダンバー中尉(ケヴィン・コスナー)は、思わぬことから英雄となり、その軍功が 認められて勤務地の選択権を与えられる。彼は消え行くフロンティアを見たいという思いからダゴタ辺境の砦に赴任するが、そこは すでに無人となっていた。 1カ月が過ぎた頃、ダンバーの前に先住民であるスー族の男が現われる。この男 “蹴る鳥”(グレアム・グリーン)はその後、 一族の “風になびく髪”(ロドニー・A・グラント)らとともに再び砦を訪れる。 たがいに悪意がないことを悟ったダンバーとスー族は次第に意気投合し、ダンバーはいつしか彼らに “狼と踊る男” と呼ばれる ようになる。しかし、先住民が神聖視する土地には合衆国軍隊が迫りつつあった…。 通常版を劇場で見てからもう16年が経つ。久しぶりに見た今回は、4時間の「アナザー・ヴァージョン」。いずれの版でも ダンバーと先住民が最初に接触を持つシーンが抜群に面白い。 無人の砦で、いつか到着するはずの支援部隊を待って日々を過ごすダンバー。彼をセジウィック砦に送り届けた商人の「先住民なんて 見たことがない。もうこの辺にはいないんじゃないか」という言葉通り、人影1つ見えない。(もっとも商人はダンバーと別れたあと、 先住民の一部族に襲われて死んでしまうのだが。) のんびり池で水浴していると、突然先住民の男が現われる。ダンバーも驚くが、裸で飛び出してきた白人に先住民はもっと驚く。 従来の西部劇に登場する凶暴なインディアンなら、ダンバーはここでひとたまりもなく殺されてしまうところだが、すたこら逃げ出す のは先住民の方なのだ。
このあと、彼らはダンバーの招きで正式に砦を訪問する。得意そうにコーヒー・ミルを挽いてコーヒーを振舞うダンバー。
鹿爪らしい表情で彼の手の動きを見つめる先住民たち。ダンバーはコーヒー用に砂糖を勧める。先住民たちは用心しいしい口にいれ、
旨いと分るとドカドカいくらでも入れる。ダンバーはバッフォローについて聞きたいが、先住民たちがなんと呼んでいるのか分らない。そこで背中を丸め這い回り、 バッファローの仕草を真似る。先住民たちは「この男はバカじゃないか」と耳打ちし合う。 この一連のシーンだけで、もうこの映画がすっかり好きになってしまう。敵意を持たない出会いは、言葉が通じなくても互いに心を 通わせることが出来る。この映画のテーマがユーモラスな場面のなかで見事に描かれている。 バッフォローの大群が大草原を通過するシーンが素晴らしい。もうもうと上がる土埃の中を地響きを立てて疾走するバッフォローの 群れ。“勇壮” という以外に表現がみつからない。大自然の申し子だ。先住民たちが彼らに畏敬の念を抱き、必要な数だけを狩り、隅々 まで生活の糧として利用した気持ちがよく分かる。 それに対し、白人たちはただの野生動物として、皮を取るためだけに殺すのだ。累々と横たわるバッファローの死骸を前に、 ダンバーは白人の仕業に恥ずかしさを覚える。彼が先住民文化に引かれていく契機になるのが、このバッファロー狩りだ。 (乱獲のために絶滅寸前まで行ったバッファローは、今は保護政策で増えつつあるそうだ。)
ダンバーと先住民に育てられた白人“拳を握って立つ女”(メアリー・マクドネル)が初めて愛を交わす場面が美しい。木立の葉々が
美しく黄葉し、白い綿毛のような種子が空を舞う。穏やかな空気が辺りに満ちる。“拳を握って立つ女” に扮するメアリー・マクドネルがことさら若くも美人でもないところがいいなぁと思う。 『大いなる勇者』(72)でロバート・レッドフォードが演じた山の男ジェレマイアは、先住民の女を妻とするけれど、互いに相手の 文化には同化しない。それでも家族としての絆を築いていく。 一方、本作のダンバーと “拳を握って立つ女” はどちらも白人だが、先住民の生活や価値観に同化し、それによって互いの絆を 深める。異文化とどのように出会うか、という意味でジェレマイア、ダンバー、どちらの有りようも私にはとても興味深く思える。 反逆罪に問われたダンバーは、スー族に累が及ぶのを怖れ、彼らに別れを告げて “拳を握って立つ女” とともに雪深い山中に分け 入っていく。その姿に重ねて、先住民の滅びが数年後に迫っていることを告げる字幕が出る。 自然とともに生きてきた者たちが消えていく悲しみが、ひたひたと寄せてくるラストシーンだ。本作はアカデミー賞を多くの部門で 獲得したせいか、その後バッシング的批評を耳にすることが多いが、私は誠実に作られた良い映画だと思う。 【◎○△×】8 |