| 【 じっくり映画館 】No.8 |
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1999年 フランス 115分 監督 ジャン・ベッケル 出演 ジャック・ガンブラン、ジャック・ヴィユレ アンドレ・デュソリエ、ミシェル・セロー エリック・カントーナ、イザベル・カレ |
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ストーリー 1930年代初めのフランス。ある片田舎の沼地のほとりに復員兵のガリス(ジャック・ガンブラン)が住み着いて12年になる。隣人 は、新しい妻との間に3人も子供がいるのに、いまだに前妻が忘れられない情けない男、リトン(ジャック・ヴィユレ)とその一家だ。 リトンの末娘で、5歳になるクリクリはガリスになついている。豊かな自然に恵まれたこの沼地で、ガリスとリトンは、金持ちの友人 アメデ(アンドレ・デュソリエ)や町の成功者ぺぺ(ミシェル・セロー)たちと親交を深めながら、貧しいけれど平穏な生活を送って いた。ところがある日、リトンが町でとんでもないヘマをしでかす。 人が老境にさしかかった時、人生を振り返って“黄金の日々”と思い起こせるのは、いったい幾つくらいの時だろう。小学校に入る前、 5、6才の頃・・・。すべてが輝きに満ちていた時代。 そう、これはクリクリと呼ばれた女の子の5才の夏の思い出だ。 1930年代のフランス、主人公は沼地の住人ガリスとリトンだ。ガリスは第一次大戦に従軍し、なにか心に傷があるらしい。復員の 途中沼地を通りかかり、そのまま住み着いて12年が経つ。立ち去りたいと思いながら出来ずにいるのは、沼地の隣人リトン一家 が気にかかるからだ。 リトンは、若い頃男を作って家出してしまった女房パメラを、今も思い切れずにいる。新しい女房の間に3人も子どもがいるのに、 今だに未練たらたらだ。ワインをがぶ飲みして、愚痴をこぼしてばかりいる。この情けない男がクリクリの父親だ。母親がいらいらして ヒステリックになるのも無理はない。でもそんなことにはお構いなく、クリクリたちは元気いっぱいに沼地の日々を過している。 映画はこんなシーンで始まる。 林の木洩れ日のなかでガリスが懸命にスズランを摘んでいる。花束にして町で売るためだ。リトンは小川でワインを冷やしている。 足で引き上げ、冷え加減を確かめるために半分飲んで、ついでにガリスの分まで飲んでしまう。もどったガリスに言い訳しつつ、 小川の水で顔を洗う彼の横で用を足す。あきれ顔のガリス。 ふたりの関係、それぞれの性格が見てとれて巧みな導入部だ。『嘘の心』のジャック・ガンブランが誠実で芯の強いガリスを好演して いる。味があるのはリトン役のジャック・ヴィユレだ。フランスの国民的喜劇俳優ということだが、狸を連想させる憎めない体型、風貌、 それだけでリトンの人柄が彷佛としてくる。 人手の足りない農家の雇われ仕事や、花売り、かたつむり売り、町のお屋敷の庭仕事、夜は家々を巡っての下手な「五月の歌」の流し など、その折々の小さな稼ぎがふたりの生計だ。楽して稼ぎたいリトンは少し不満かも知れない。それでもふたりは充分に幸せだ。 沼地をしょっちゅう訪ねる友人たちがいる。 アメデはどうやら資産家の息子らしい。いつも白の三つぞろいに白帽子。ビシッと決めてやってくる。かたつむり取りの時にすら お洒落を忘れない。ガリスとリトンが仕事をする間は木陰で読書する。大きく伸びをして「僕らのような生き方が自由というものだ」と いう。アメデはいつも笑っている。邪気のないその笑顔を見ていると、心が伸びやかになってくる。 町の成功者ぺぺは同居の娘夫婦とうまくいってない。冷え冷えした家庭だが、孫のピエロと仲がいいのが救いだ。ぺぺは沼地出身で 蛙釣りが大の得意だ。リトンがレストランから注文を受け四苦八苦していると、勇んで駆けつけ、たちまち120匹も釣り上げてしまう。 沼地出身を隠しておきたい娘はいい顔をしないけれど、ぺぺは一向気にしない。 クリクリはぺぺと一緒にやって来たピエロに一目で恋をする。「恋って嬉しくて悲しいものなの?」と小首をかしげてガリスに聞く。 ソバカスだらけのおしゃまな顔が愛らしい。 ガリスの小屋の前でする昼食は最高だ。沼で獲れた魚とワイン。透明で柔らかい夏の日射し。 ある日の夕食も素晴らしい。アメデがルイ・アームストロングのレコードをかける。夕暮れの中を蓄音機からジャズが流れる。アメデ がサックスを吹くアームストロングの仕草を真似る。みんな一緒にいるだけで楽しい。貧しいけれど、ささやかで素朴な幸せが満ちて いる。 上品なバラ好きの老未亡人、ガリスが仄かな思いを寄せるお屋敷のメイド、かたつむりの穴場を知っている機関士、みな気のいい人 ばかりだ。でも心配がないではない。リトンが町で酔って騒ぎを起こしたのだ。カフェで見かけたボクサー、ジョーの恋人をパメラと 勘違いして、絡んだのだ。怒ったジョーは大暴れ、とうとう警察に留置されてしまう。試合は出られず、恋人には逃げられ、おまけに 損害賠償で破産するしで、怒り心頭のジョーは出所したらリトンを殺すと息巻いている。 しかし人の関わりは不思議なものだ。冬の沼でリトンとジョーは一触即発の状態に陥るが、それが切っ掛けでふたりは仲のいい友人に なったのだ。ジョーはボクサーのマネージャーになり、リトンはトレーナーになった。もうガリスがいなくても大丈夫。旅立つ時を知り、 ガリスは去っていく。 語り手のクリクリが最後のシーンで初めて現在の姿を見せる。 ピエロと結婚し、美しく老いたクリクリ。彼女の視線の先には埋め立てられ、駐車場となった沼地が見える。「これも時代の流れ だから・・・」と静かに受け入れる今のクリクリに、タイアのブランコがくるくる回り、笑い声をあげる5才のクリクリが重なる。 過去と現在が鮮やかに交差する。 しみじみと良き時代への郷愁が胸に寄せてくる。現代が見失ってしまったもの、<人間らしく生きる>ことに思いを馳せたひととき だった。 【◎○△×】8 |