| 【 じっくり映画館 】No.3 |
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1999年 アメリカ 131分 監督 ラッセ・ハルストレム 出演 トビー・マグワイア シャーリーズ・セロン マイケル・ケイン、デルロイ・リンド エリカ・バドゥ、ポール・ラッド キャシー・ベイカー |
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ストーリー 『ガープの世界』などで知られるアメリカ現代文学の巨匠、ジョン・アービングの原作をもとに、孤児院で育った青年がさまざまな 経験を通し成長してゆく姿を描いたヒューマン・ドラマ。アカデミー脚色賞・助演男優賞を受賞した。監督は『マイライフ・アズ・ア ・ドッグ』『ギルバート・グレイプ』のスウェーデン人監督ラッセ・ハルストレム。 1940年代のメイン州ニューイングランド。孤児のホーマー・ウェルズは、ウィルバー・ラーチ医師の経営する孤児院で、彼や 看護婦たちの愛情に包まれて健やかに成長する。親代わりのラーチ医師を尊敬するホーマーだったが、彼が違法な堕胎手術を行うこと だけは、受け入れることが出来なかった。若いカップルが堕胎のために医院を訪れたのをきっかけに、ホーマーは自分の人生を探すため に孤児院を出ていく。彼が落ち着いたのは、カップルの縁で見つけた大きな林檎農園だった。黒人の季節労働者たちが寝泊りする小屋で 彼の新しい生活が始まった。 『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』『ギルバート・グレイプ』のラッセ・ハルストレム監督の作品とあれば、アカデミー賞受賞はさて おいても見ない訳にはいかない。渋い色調のなかに描かれる青年の成長の物語は期待に違わぬ出来であり、しみじみとした余韻を残す。 雪深いアメリカ、メイン州の片田舎。寂れた駅に煙りを吐いてローカル列車が停まる。初老の男性(ラーチ医師)のナレーションの声 に導かれて、丘の上の建物がアップで近づき、やがてそれが孤児院だと分かってくる。小さな子どもたちの賑やかな声。青みがかった 暗い色調の画面なのに、ほっかりと暖かいものが伝わってくるこの冒頭シーンで、すっかり物語のなかに引き込まれてしまう。 ホーマー・ウェルズ(トビー・マグワイア)はこの孤児院で生まれ、2度貰われていったが、2度とも返されてきた。一度目は「泣か ない赤ん坊は赤ん坊らしくない」という理由で、二度目は叩かれ過ぎて泣き止まなくなったために。婦人科の医者でもある院長ラーチ 先生(マイケル・ケイン)はこんな彼を愛し、自分の後継者として育てていく。 ホーマーは兄として幼い子どもたちの世話をし、ラーチ先生から医療技術を学んでいく。ラーチ先生は毎晩就寝前に子どもたちに本を 読みきかせ、「(君たちは)メインの王子、ニューイングランドの王(なのだよ)」と呼びかけ、子どもたちを寝かしつける。私の好き な場面のひとつだ。マイケル・ケインの老熟した演技が素晴らしい。 ここは過酷な運命の下に生まれてきた子どもたちの安らぎの場所だ。それでも子どもたちは自分だけの家族を望む。養い親が子を選び に訪れる時、気にいられようと作り笑いをし、自分は望まれなかったと知った時の子どもの悲嘆は痛々しい。 物語の舞台である30〜40年代、中絶は違法なのだが、ラーチ先生は不幸な妊婦を救うためにはやむを得ないと考えている。しかし ホーマーはそこだけは先生に同意することができない。ある日若い恋人たち(ウォリーとキャンディ)が中絶にやってくる。この二人の 登場は、穏やかだが隔絶された寂しい孤児院に、世間の風が吹き込むような清新さをもたらす。 ホーマーは二人と知り合ったことをきっかけに、院長の悲嘆と制止を振り切り孤児院を出る決心をする。ウォリーの口利きで 落ち着いた林檎園での生活は、すべてが珍しく新鮮だ。黒人季節労働者たちとの林檎摘み、初めて見る海、ドライブイン・シアター、 えび漁・・・。ウォリー(ポール・ラッド)、キャンディ(シャーリーズ・セロン)との友情も深まる。 こんななかでウォリーは出征し、残されたキャンディは寂しさからホーマーと結ばれる。ホーマーにとって初めての恋だが、ウォリー を裏切っているという罪の意識は二人にいつも付きまとう。さらにホーマーに重大な体験が訪れる。 林檎摘みの仲間、黒人少女ローズ(エリカ・バドゥ)が妊娠しており、相手は父親のミスター・ローズ(デルロイ・リンド)だと分る。 ミスター・ローズは、サイダーハウス(「林檎ジュースの家」=季節労働者の宿泊所)に貼られた規則は押し付けられたもので、自分 たちのものではない、といって、ホーマーに自律して生きることの意味を教えてくれた人だ。ホーマーは初めて世の中が通り一遍のもの でないことを知る。 みずからの手でローズの堕胎手術を行い、ラーチ先生の言葉の意味を理解するホーマー。初恋と中絶手術、二つの痛みをともなう体験 をくぐり、ホーマーは少年から大人へと成長する。この頃ラーチ先生がエーテル中毒で事故死した知らせが届く。先生の遺志をつぐ決意 をしたホーマーは懐かしい孤児院へもどっていく。 子どもたちへ無私の愛情を注ぎながら自分は決して幸せでなかったラーチ先生、娘を深く愛しながら過った道に踏み込んでしまった ミスター・ローズ、これら寂しく風変わりな人たちを描くハルストレム監督の眼差しは淡々として暖かい。声高でない口調が説得力を もつ。 ホーマーを演ずるトビー・マグワイアは、『アイス・ストーム』ではやや存在感が薄かったが、ここでは無垢ななかにも静かな分別を たたえ、熟練の脇役陣に引けを取らぬ主役ぶりである。若手俳優の思いがけぬ成長に立ち会うのも映画の愉しみのひとつだ。 【◎○△×】8 |