| 【 じっくり映画館 】No.13 |
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1996年 フランス/イラン 73分 監督 モフセン・マフマルバフ 出演 シャガイエグ・ジョタト、アッバス・サヤヒ ホセイン・モハラミ、ロギエ・モハラミ |
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ストーリー 色鮮やかな絨毯を前に語られるファンタスティックな恋の物語。 緑したたる林の傍らを泉からせせらぎが流れている。林の奥の小屋に住む老夫婦(ホセイン・モハラミ、ロギエ・モハラミ)は、この せせらぎで “ギャベ” と呼ばれる美しい絨毯を洗う。 ある日いつものように洗いながら、妻が絨毯に話しかけると、鮮やかなブルーの民族衣装を身にまとった美しい娘(シャガイエグ・ ジョタト)が現れた。ギャベと名乗る娘は老夫婦に問われるままに身の上話を始める。 ギャベは狼の遠吠えで語りかける若者に恋をした。しかし、父は2人の結婚を許さない。町に住むギャベの伯父(アッバス・サヤヒ) が戻ってくるのを待てという。 イラン映画の2本立てを見た。『パンと植木鉢』と『ギャベ』、どちらもモフセン・マフマルバフ監督作品だ。彼は現在イランで 大衆の圧倒的支持を受けている映画監督だそうだ。彼の作品が日本で公開されるのはこれが初めてだという。 『ギャベ』は溢れるほどの色彩に満ちた映画だ。緑したたる林の泉で老夫婦が鮮やかな深青の絨毯を洗う。そこへ青い民族衣装の 美しい娘が現われ、身の上話を始める。名前はギャベ。遊牧民カシュガイ族の娘だ。狼の声をもつ若者に恋をするが、父は結婚を許して くれない。病気の祖母が町に住む伯父の帰りを待っている、それまで待てという。
伯父は祖母の死に間に合わない。すると父は、独身の伯父が結婚するのが先だという。伯父は泉のほとりでカナリアのように歌う娘と
出会い結婚する。それでもまだギャベの恋はまだ許されない。母が妊娠した、出産が先だという。若者は馬に乗り、狼の遠吠えで話しかけながら、遠い丘の上からギャベを見守る。遊牧の長い旅のあと、母が出産する。ギャベの 結婚はまだ許されない。・・・民話のような世界が展開する。 ギャベというのはイラン遊牧民、カシュガイ族の織る絨毯のことだそうだ。草花で染められ、洗えば洗うほど色は深く鮮やかになると いう。映画でも最初から最後までさまざまな絨毯が出て来る。幾つも並んだ大きな壺に湯が煮立つ。色鮮やかな花や草の束が入れられ、 煮立てられる。そこに糸の束が入れられ、染められる。 地面に打たれた小さな4本の棒が素朴な織り機。縦糸が張られ横糸が通される。その横糸を鉄櫛がガシッガシッと叩き込む。美しい 文様が織り上げられていく。そして絨毯を洗う。絨毯はいつもゆらゆら揺れる水の揺らめきを通してスクリーンに現われる。そのさまは 幻想的で、官能的ですら
ある。絨毯にはギャベと若者の恋物語がそのまま織り込まれていく。図柄も配色も決まりはない。白馬に乗った若者も、結婚式で伯父の 披露した愉快な踊りも、自由に、思いのままに織られていく。どれも子どもの絵のように伸びやかで楽しい。色が美しい。 伯父は帰郷の途中、遊牧民の学校で<色>の授業をする。伯父が「赤」といって手を伸ばすと広い草原が現われる。 子どもたちが声をそろえて「赤」という。振り返った伯父は両手いっぱいに赤い花を抱えている。「青」といって上に手を伸ばすと空が 現われ、伯父の手が青く染まる。こうして伯父は子どもたちに色を教えていく。 「人生は色だ」「愛は色だ」という台詞がでてくる。マフマルバフ監督の思いがこの言葉に集約されているような気がする。 遊牧民がキャラバンする大草原は四季折々に美しい風景を織りなして、画面に写し撮られていく。女性たちの民族衣装も色が豊かで 美しい。イランというと女性の黒いチャドル姿しか思い浮かばない私には、この映画の溢れるほどの色は驚きだ。
ギャベの身の上話を聞く老夫婦の老人のセリフ回しが面白い。詩を詠うような、喉の奥を引くような声を出す。足が痛いと愚痴をこぼし、子を生んでくれなかったと妻を責め、若いギャベに「愛してくれ」と訴える。妻は気にせず、絨毯を洗い、ギャベの話に耳を 傾ける。 老人の言葉がだんだん狼の遠吠えのように長く尾を引くようになる。ギャベと同じ青い民族衣装をまとい、同じ細長い壺を肩に乗せた 女が振り返る。ギャベが泉に現われた時と同じ仕草だ。でもそれは老妻なのだ。 駆け落ちしたギャベと若者が年老いて、今は泉のほとりで絨毯を洗いながら睦まじく暮らしている。「あ〜、そういうことだった のか」と微笑が口元に上ってくる。それにしても、狼の声をもつロマンティックな若者が老妻にだだをこねる老人になっている。人生の 機微を温かいユーモアに包んで、映画はあくまで伸びやかだ。 マフマルバフ監督は、『パンと植木鉢』のオーディションに現われた娘を見て、この映画のアイディアが閃いたという。彼女の黒い 大きな瞳は強く輝いて、絨毯の精 “ギャベ” にぴったりだ。 【◎○△×】7 |